内容説明
フリーライターの原田璃々子は、民俗学の講師だった先輩・島野仁と東京二十三区を巡り取材をしている。板橋区を訪れた二人は、自殺の名所、高島平団地に向かった。だが―「私が探している場所は、ここではありません」。彼女は“何を”探しているのか。
著者等紹介
長江俊和[ナガエトシカズ]
1966年大阪府生まれ。映像作家、小説家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄之助
297
大都会・東京の地下や暗渠の中に隠れたドラマを掘り起こすエキサイティングな作品だった。中でも、渋谷区の女が、気に入った。昭和39年の東京オリンピックのための突貫工事で一部に蓋をしてしまった渋谷川。支流は、童謡「春の小川」のモデルになっている。高度成長の陰で、埋められたり覆い隠されてしまった、東京の遺産が気になった。2020年東京五輪では、国立競技場の建て替えに際して、隈研吾の設計図によると「春の小川」が復活する予定だった。開発一辺倒で、蓋をしてしまったどぶ川を清流に戻す必要性をこの1冊から、強く思う。2023/12/10
nobby
151
あらっ!?なんか拍子抜けで読了してしまった…珍しくも序盤で「もしかして」と気付いてしまったからか一番の醍醐味は味わえず…そうなると、蘊蓄いっぱいの東京探索本な訳で(笑)何かあると期待ばかりで読み進めて、それだけで終わってしまった…それでも〇〇区の女と題して描かれる5篇それぞれに、言葉の謎解きやコネくり回される視点などの工夫はなかなか。そこに地名の由来や歴史重ねての都市伝説が加わると思わずゾッとさせられる。ただ、取り上げられた地域になじみが無かったのが残念…これでも東京出身で高校までは過ごしたんだけどなぁ…2020/05/20
ちょろこ
120
続編のために再読、の一冊。おさらいをするつもりで読んだけれど前回よりもハマってしまった。東京二十三区、一度は耳にしたことがあるほどの有名なあの場所。かつての面影さえも葬り去られたかのように存在する場所。語られていく蘊蓄と、まるで過去の負の存在がもたらしたかのような数々の恐怖。この両方を楽しめるのがこの作品の魅力。ガイド役の先輩、璃々子の探し求めている場所、もの…こういうことだったのか、という驚きにも満足。続編も楽しみ。2019/08/28
nuit@積読消化中
119
むは!もっとさっくりした怪談かと手に取りましたが、東京の闇をこれでもかっ!と薀蓄で攻めてきます。自分の所縁ある土地のことは勉強にもなって読んでてふむふむと。しかし、土地の歴史やら何やらの薀蓄と並走する物語が微妙にどこかで読んだことのあるようなお話に感じて物足りなくなったり、途中薀蓄疲れも出てきて、これ続編はもういいかなぁ…と思い始めてたら、江東区の終わり頃に、え!?もしや…??と気付いちゃいました。早くその禁忌の闇の正体が知りたい!その闇とやら、きっと一筋縄ではいかないはず!これは続編期待してますよ!2017/06/16
スパシーバ@日日是決戦
108
C (2016年) 東京都23区の成り立ちは明治元年に遡り、現在23区と26市、5つの町と8つの村で構成されている。各短編の評価は以下の通り。「 ◎ 江東区の女」「〇 板橋区の女/渋谷区の女/港区の女/品川区の女」。渋谷の暗渠(川から漂う悪臭なし)、ゴミの埋め立て地だった夢の島(タワーマンションが立ち並ぶ)、駅名と区が一致しない(JR品川駅は港区、目黒駅は品川区)、鈴ヶ森刑場跡、世界中の警察が指紋捜査を取り入れるきっかけになった大森貝塚の発見など、その土地に纏わる蘊蓄に感心することしきり..。2017/01/17