内容説明
ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。澄生と真澄の兄妹に創太が弟として加わり、さらにその後、千絵が生まれる。それは、幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。しかし、落雷とともに訪れた“ある死”をきっかけに、澄川家の姿は一変する。母がアルコール依存症となり、家族は散り散りに行き場を失うが―。突飛で、愉快で、愚かで、たまらなく温かい家族が語りだす。愛惜のモノローグ、傑作長篇小説。
著者等紹介
山田詠美[ヤマダエイミ]
1959年、東京都生まれ。85年「ベッドタイムアイズ」で第22回文藝賞を受賞しデビュー。87年「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」で第97回直木三十五賞、89年「風葬の教室」で第17回平林たい子文学賞、91年「トラッシュ」で第30回女流文学賞、96年「アニマル・ロジック」で第24回泉鏡花文学賞、2000年「A2Z」で第52回読売文学賞、05年「風味絶佳」で第41回谷崎潤一郎賞、12年「ジェントルマン」で第65回野間文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
385
これまでに読んだ山田詠美(これで27作目)とは印象がかなり違っている。ここでも問われているのは愛の形なのだが、今回は家族間の愛の危うさと、その危機回避が描かれる。小説世界の設定も、この作家は時に大胆であったりもするが、それにしても長男の澄生が雷に撃たれて突然死したり(しかも、そのことは澄川家に決定的な亀裂をもたらす重要なファクターである)、創太の恋の相手が母親と同じくらいの年齢の女性であったり(もっとも、これは彼のマザーコンプレックスの反映だろうが)。3人の子どもたちそれぞれの一人称語りという構成は⇒2024/06/13
風眠
189
人の死は非日常なのに、ある日突然、現実になってしまうものだ。それは誰にでも起こることで「他人ごと」ではない、「自分ごと」だということ。子連れ同士で再婚して、これから幸せが増していくと信じていたとき、カリスマ的魅力をもった長兄が死んでしまう。実妹、義弟、父親違いの妹、それぞれの立場から、死者への想いと家族への想いが、章ごとに語られていく。溺愛していた息子を喪ったことで、アルコール依存症となってしまった母親、物事を軽く見すぎてしまった父親、そして成長した子供達。慟哭の嵐の中から、再生、そして出発していく物語。2013/08/01
舟江
172
初読みの作家。45年程前、故団鬼六先生から裸で縛ってもらって、某雑誌に出演(?)したということを知ってから、この作家は生理的に受付けなかったが、題名を見て、枯れてきたのかなと思い手に取った。しかし、内容は意に反して若々しい内容であった。しかも、4章全部が各60ページで統一され、語り手がすべて違う。彼女にとって文学、命ということが感じられた。2016/11/09
団塊シニア
147
各章ごとの展開が絶妙、ストーリーを進める手法が新鮮でささやかな希望を感じさせるラストは読み手に余韻が間違いなく残る作品である。貪欲に言葉を追い求めてきた山田詠美ならではの質の高い作品である。2013/05/06
パフちゃん@かのん変更
127
雷に打たれて死んだ澄生。死んでも母に強い影響力を持ち、学校でも伝説の人になるほどの人物。どんな青年だったのかもっと詳しく知りたかった。しかも、最後に息を引き取りそうになった母を生き返らせる(?)もう、何が何だか(-_-;)澄生が亡くなるまでとても幸せな家族だったこと、その幸せはもしかすると澄生が作り上げていたのかもしれない。何だか可哀そうで不思議な話。2013/10/23