内容説明
京都の書店では一冊の本が全裸の女に変わり男と交歓し、東京のお寺ではビルマのジャングルに飛んだ男がトラを見て小便を漏らす。香川の豊島ではじいさんが指でキスを釣り、大分のストリップ劇場では湯の中に男も女も生も死も溶けていく―。豊かで深い空間と時間が立ち上がり、胸の底で眠っていた魂が踊り出す。北海道、長野、茨城、東京、京都、熊本、福岡、大分、沖縄―。出会った人々、空気、時間に任せ、うねり弾む文体で紡がれた特別な小説。
目次
アート
亀
場所
布
クマ
花
光
箱庭
鳥
本〔ほか〕
著者等紹介
いしいしんじ[イシイシンジ]
1966年大阪生まれ。96年、短編集『とーきょーいしいあるき』を、2000年、初の長編小説『ぶらんこ乗り』を刊行。03年、『麦ふみクーツェ』で第一八回坪田譲治文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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37
*即興ライブ小説*2007年。六本木のイベントで自著の朗読を頼まれたいしいしんじは、"既に自分が知っている話をもう一度読んでも面白くない"と思い、その場でちょっと小説を書きながら声に出して読んでみた…。そんなライブならではの雰囲気で紡がれた54の奇跡――これは凄い!即興でこれ程面白い作品を描ける著者の筆腕に驚嘆! ⇒続き2013/11/24
あっちゃん
19
会場に行き、その場で小説を書く…その才能には驚くけど、そのせいで一作があまりにも短い!中には、良いなぁと思う話もあるけど、大半が訳が分からないまま…とか、ライブ性質が強いせいか、ノリについていけない感じのもある(笑)2014/04/04
さすらいのアリクイ
11
読んだ、読了ではまだなくて、読んでいる途中なのですが、なかなか特殊な小説だと思います。作家いしいしんじさんがイベントや講演会など、色んな人の前で即興で書いた数々の小説が載った短編集。短編をそのまま読んでも面白いのですが、短編の終わりのすぐ後に、小説が創られた場所や会場名などが書かれています。短編を読んでみたあとに場所や会場名を知り、そこから場所の雰囲気や、小説に出てきた人と場所や会場の関係、小説が創られているときの場所の雰囲気などを想像してみると、本の中の短編をもっと楽しむことができるのでは、と思います。2015/12/19
遠い日
8
ライヴ小説と銘打って、日本のあちこちで絵や造形や音楽のイベントなどを行うアートスペースにて、即興で小説を書き、自身で朗読するというパフォーマンスありきの小説たち。ショートショートに近く、いやもうこれは詩だなぁというのが読んだ感想。ひとりで黙ってこの本を読んでいては決してわからない空気がここに潜んでいるのだろうなと、切に感じる。組んでこれをやった人たちも現代アートの担い手たちだ。なまなことばに翻弄されるもまたよし。白い装幀がいしいさんの心意気を表すようで、しゃれている。装幀は池田進吾(67)。2013/03/04
そうたそ
8
★★☆☆☆ タイトル通り、その場で着想を得、小説を書きその場で朗読をするというイベントがまずこの本の根本にある。正直、読んでもよく分からないというものが多かったのだが、仮に自分がそのイベントで直にそのストーリーを聞けば全く別の感じ方をしただろうと思う。また、小説自体もライブ感があってこそ映えるようなものが多く、書籍にされた時点で書かれた当時より輝きは失われているのかもしれない。しかし、いしいしんじの頭のなかを盗み見るという意味では面白い作品かもしれない。3.11以後の変化にも着目できる。2013/01/19