内容説明
いじめられっこだけど歌が上手い祐希、長距離走の得意な陸上部のわたし(『Your song』)。黒板にすら、素敵な絵を描ける彼女、浮かないように自分に嘘をつく転入生のぼく(『泥棒の娘』)。品行方正・成績優秀な学級委員長のわたし、小説を書き始めた落ちこぼれの鹿山くん(『ねえ、委員長』)。初めてぼくが、本気で恋をした君へ。書けなかったラブレターのかわりに贈るもの。『いま、会いにゆきます』『そのときは彼によろしく』恋愛小説家・市川拓司の最高傑作。
著者等紹介
市川拓司[イチカワタクジ]
1962年東京都生まれ。2002年『Separation』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chiru
105
大人になった主人公が回想する中高生の頃の実らなかった恋の短編集。 誰も注目してない人なのに、気がつけば目で追ってしまうことってあったと思う。 この人の良さはみんなには見えてなくて、自分にしか分からないのかも…って思うことも。 自分を肯定してくれる人との間に生まれる優しさやぎこちなさ、好意を寄せあってるのに、恋とよぶのをためらう不器用さがなつかしいな。 何度も涙ぐみそうになったけど、心地よいラストに微笑んでしまう。市川拓司さんの作品の中で一番好きです。 ★5 2018/04/30
おかだ
69
くっそー、3つ全部最後1ページに泣かされた、なんか悔しい! 学生時代の切なく痛い、甘くて苦い初恋を振り返る3つの短編。クラスで浮いてるちょっと風変わりな同級生と主人公が出会い、いつしか恋をし、そして別れ…っていう判で押したようなお決まりのパターンで3つとも攻めてくる。そんな彼らが時を経て再会する。当時想い合っていたその感情のままに。3回天丼されても泣ける、ちくしょー!再会した2人の表情とか、未来とか、想像するだけできゅ~ってなる。一生に一度っきりの大恋愛、市川さんだからこそ説得力を持って紡げる物語だな~。2019/02/23
そのぼん
63
透明感のある恋愛ストーリーが三編収録されていました。学生時代のストーリーで、懐かしい、優しい気分になりました。2012/10/12
Rui
54
少し孤独であったかい、素敵なお話達。自分の学生時代の痛い記憶、切ない想い、少し酸素の薄い教室や放課後の風の匂いを思い起こさせるような物語。最初の二編は少しリンクしているようなしていないような不思議な感じがした。最後の祐希の歌が好き。委員長の話には少し共感した。あそこまで優秀じゃないけど、少しいい子ぶりっ子なところや彼女の父の態度が。「わたしの悦びは彼に告げることでようやく本当の感情になる。」「おやすみ!と大きな声で言うと、ああ、と彼の声が返ってきた。ただ、それだけのことがなんだか嬉しかった。」2013/11/16
モモ
53
久々の恋愛小説。「Your song」外国の曲を上手に歌う祐希に走り方を教えることになった泉川。マラソン大会で10位以内に入れたら可愛い吉川さんにキスしてもらえるらしい。かくして祐希は10位以内に入るも…。ちょっと複雑な恋愛模様。最後の歌がいい。これは抱きつくしかないでしょう。「ねえ、委員長」はちょっと切ない。優等生の委員長の勉強の邪魔をするなと周りの大人たちに言われる宏樹。不良に恋する良家の娘の話といった感じ。やはり「Your song」が一番好みでした。2022/02/06