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出版社内容情報
決 壊 す る 文 体
――圧倒的な感情がほとばしり、膨れ上がり自壊する言葉の群れが未熟な欲望を覆い尽くす。10歳の少女らを閉じ込めるひどく退屈な夏休み、早熟なふたりの過激で破滅的な友情。
スペイン最南カナリア諸島発、世界18カ国語に翻訳の問題作。
***
スペイン・カナリア諸島に暮らす、10歳の「わたし」と親友イソラ。
せっかくの夏休みは、憂鬱な曇天に覆われていた。薄暗い貧困の地区を抜け出して、陽光のふりそそぐサン・マルコス海岸に出かけたいのに、仕事に追われる大人たちは車を出してやる余裕がない。ふたりの少女は退屈しのぎのため、不潔にして乱暴、猥雑で危うい遊びにつぎつぎ手を染める。
親友というには過激すぎる、共依存的関係性。
「わたし」にとってイソラはまるで聖女のように絶対的な存在だった。イソラが両膝を怪我すれば、舌でその血をなめとった。イソラの飼い犬になりたかった。粗暴な物語に織り込まれた緻密な象徴の数々。子どもらしいイノセンスとは無縁の、深い悲しみに由来する頽廃と陶酔の日々。
イソラと共にある日常は永遠に続くかに思われた。しかし——
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪紫
52
イタリアの島の夏。「わたし」と親友の少女イソラの10歳の数々の物語。「悪童日記」を読んだような感覚。きれいはきたない、きたないはきれい。最初から最後まで汚物や閉塞感に包まれた話なのにどうしてこんなに瑞々しいのか。飾らない夏。こんな日常でも「わたし」とイソラの日々は続いていく。不思議と詩的で、何処か強烈。2025/06/13
ヘラジカ
39
爽やかで可愛らしい表紙絵に反して作品内容は荒々しく、幼稚で、お下劣。そして溢れんばかりの生命力に満ちている。『悪童日記』を髣髴とさせるが、この作品の剥き出し感はその比ではない。幼い少女が語る破滅的な日常と友情は、汚物と未熟な性による原色で彩られていて、そのまま彼女たちの世界観をVRで体験しているようだ。それぞれのエピソードもいちいち強烈。恐ろしくヴィヴィッド。終始めちゃくちゃで下品なのに、時たま煌めくような詩情も見えるのが巧いな。解説でフェルナンダ・メルチョールの影響を受けていると知って納得した。2025/05/19
おすし
22
女の子って可愛くてキレイでいいにおいがして、百合ってイイヨナ!…などという幻想は木っ端微塵ダヨw こういうの大好き!!生きているんだからね汚いしクサイしキモイじゃん、あたり前田のクラッカーよ。10歳の女の子ふたりのほんのちびっと歪な友情。あっけらかんと振舞っているようでも子供ながらにいろいろ抱えててうっすら死のイメージも漂う。お尻にくい込んだパンティを引っぱる描写が何度もあるのは新しいのを買ってもらえないからか…とか笑ってばかりでは読めない面もあり、でも笑っちゃう。汚っこいのにキラキラでとても眩しい。2025/06/29
mer
6
血の匂い水の匂い排泄物の匂い吐瀉物の匂い、さまざまな匂いを心に浴びながら、駆け抜けるように転がるように進んでいく物語の疾走感が心地よかった。少女たちの「ほんとう」が散りばめられていて狂おしくも愛おしかった。2025/07/15
してるね
4
スペイン領テネリフェ島を舞台にした、10歳の少女二人による、ある夏休みの日々の記録。まあ10歳の子供なんてそんなものだとは思うけれど、粗野で、下品で、時には自慰にいたったりもする。ただ逞しくも、真っ直ぐに、のびのびと、瑞々しく日々を生きる2人が、眩しいくらいに光り輝いて見えるのもまた事実で、そういう幼少期の、かけがえのない一瞬ってたしかにあったよなぁと。徹底的に口語体に拘った地の文、そして現地特有の方言が、上手く訳されているらしく、それもまた偉業。7/102025/06/20
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