出版社内容情報
時代も場所もまったく異なる文学作品たちをつなぐテーマは〈12か月〉――12か月のうちの〈9月〉をテーマに古今東西の小説・詩歌・随筆を集めたアンソロジー。
四季をあじわい、あの作品といま同じ季節を生きるよろこびをつくる本。
シリーズ全12巻。
装丁:岡本洋平(岡本デザイン室)
【編者紹介】
西崎憲
翻訳家、作家、アンソロジスト。訳書にコッパード『郵便局と蛇』、『ヘミングウェイ短篇集』、『青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集』など。著書に第十四回ファンタジーノベル大賞受賞作『世界の果ての庭』、『蕃東国年代記』『未知の鳥類がやってくるまで』『全ロック史』『本の幽霊』など。フラワーしげる名義で歌集『ビットとデシベル』『世界学校』。電子書籍や音楽のレーベル〈惑星と口笛〉主宰。音楽家でもある。
【著者紹介】
鈴木三重吉
小説家、児童文学者。一八八二年生。夏目漱石門下。児童文学雑誌「赤い鳥」を創刊し児童文化運動の父とされる。小説に「千鳥」「桑の実」など。一九三六年没。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
62
九月は夏の終わりと秋の始まり。どことなく夜が涼しく寂しくなる季節だけど、そんな季節に相応しくどこか影を含んだ作品が多いように感じられる。注目すべきは当然萩原朔太郎「猫町 散文詩風な小説」である。読んでいるうちにここではない何処かへ誘われていく感覚はこれ以外では味わえない。北野勇作「屋上」も同様で良いなあ。震災にも触れられており、寺田寅彦「天災と国防」はさる事ながら、初めて読む島崎藤村「食堂」も市井の人の震災後を描いて見つけ物の感強し。他にも鈴木三重吉、有島武郎、岡本綺堂等季節に相応しい名文を味わえました。2025/09/19
くさてる
18
安定した内容のアンソロジー。名前だけは知っているような文豪の思わぬ作品と出会えるのがこのシリーズの良いところだけど、今回は島崎藤村「食堂」がしみじみと良かった。地に足がついた落ち着いた内容で派手さはないのに情景が目に浮かび、胸に来るものがあった。9月は関東大震災の月でもあった。同じように有島武郎の「溺れかけた兄妹」も、題名通りのシンプルな内容にもかかわらず読んでいてハラハラしてしまう読み心地でした。良かった。2025/10/21
kibita
12
9月という季節感を強く感じたのは『九月のひと』幸田文、五感に訴える美しい散文詩『九月の果樹園』マチュー・ド・ノアイユ伯爵夫人/永井荷風訳。私も9月になれば夏のバッグは使わない、麻は着ないその程度かな。面白かったのは屍臭漂う自由な夢日記か『尼「陰火」より』太宰治、全ての政治家と官僚に読んで欲しい『天災と国防』寺田寅彦、男女の恋心の複雑さ『恋のカメレオン』アンリ・トロワイヤ、関東大震災後の復興と、ある老女の心理『食堂』あたり。2025/08/19
takakomama
8
小説、エッセイ、詩歌、海外の作家さんの作品も収録した、バラエティー豊かなアンソロジー。9月は残暑、重陽の節句、関東大震災の記憶など。暑さ寒さも彼岸まで。うだるような暑さは、もう少しの辛抱かな。既読4編を再読して、9月の話だったことに気づきました。2025/08/21
Hanna
6
8月に入ったところなのだけど、9月の本を読む。今はこんなに暑いのだけど、9月もやっぱり暑い時期がかなり続くことを思い出す。それでも、ひんやりと涼しげな感じが漂うアンソロジー作品も。2025/08/01
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- レディはタテガミがお好き




