出版社内容情報
時代も場所もまったく異なる文学作品たちをつなぐテーマは〈12か月〉――12か月のうちの〈8月〉をテーマに古今東西の小説・詩歌・随筆を集めたアンソロジー。
四季をあじわい、あの作品といま同じ季節を生きるよろこびをつくる本。
シリーズ全12巻。
装丁:岡本洋平(岡本デザイン室)
【編者紹介】
西崎憲
翻訳家、作家、アンソロジスト。訳書にコッパード『郵便局と蛇』、『ヘミングウェイ短篇集』、『青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集』など。著書に第十四回ファンタジーノベル大賞受賞作『世界の果ての庭』、『蕃東国年代記』『未知の鳥類がやってくるまで』『全ロック史』『本の幽霊』など。フラワーしげる名義で歌集『ビットとデシベル』『世界学校』。電子書籍や音楽のレーベル〈惑星と口笛〉主宰。音楽家でもある。
【著者紹介】
堀辰雄
小説家。一九〇四年生。小説に「聖家族」「風立ちぬ」「美しい村」など。一九五三年没。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
60
終わりつつある夏と秋の始まり。輝くような白昼の残暑とそれに比例するように長くなる夜。お盆に夏休み。八月とはある意味季節の移り変わりを如実に体現した月の様に思える。そんな八月を舞台にした作品を集めたアンソロジー。印象に残ったのは北原白秋「影」。一読して驚いたのはこれは個人的に大好物な大正期を体現したような神経症的な都市怪談であるという事。こういう作品も書いてたのか。他にも昼の明るさを眼前に思い起こさせる堀辰雄「絵はがき」や抒情を極めたような石井桃子や吉田絃二郎も言う事無し。過行く季節を思わせる一冊でした。2025/08/17
かもめ通信
15
“ひと月”をテーマに古今東西の文学作品を集めた国書刊行会のアンソロジー“12か月の本”。『5月の本』 『6月の本』ときて、7月を飛ばして、『8月の本』を読んでみた。短編小説、詩、エッセイ、とバラエティに富んだ作品が21篇。 うちタイトルに8月とあるのは、中谷宇吉郎の「八月三日の夢」と吉田絃二郎の「八月の星座」のみ。「あの人、どう思いますか、影が無いようですね。」北原白秋の「影」はホラーなの!?石井桃子の思い出語りお盆にしみじみ。アルプスのシャモニーを舞台にした久生十蘭の「白雪姫」の西洋かぶれぶりに笑う…。2025/08/25
凛風(積ん読消化中)
9
小説多めの21篇。戦争関係のものが多いだろうとの予想を裏切った選定で、少しホッとする。選者が、あとがきに書いているように、8月は暑く明るい月なのに、お盆と終戦記念日があることで、死の影が漂う。8月の蝉の声には、どこか地に押し付けるような重苦しさを感じることがある、と思っていたが、案外この辺のことが関係しているのかもしれない。にしても、今日のこの暑さ!一歩も動けません。ある意味、読書日和。2025/08/17
takakomama
9
小説、エッセイ、詩歌、海外の作家さんの作品も収録した、バラエティー豊かなアンソロジー。8月は夏休み、避暑、蝉の声、戦争の記憶、お盆・・・ 8月なので、ぴったりのタイミング。まだまだ暑いです。太宰治の「トカトントン」のみ既読。2025/08/12
水蛇
4
春と冬がだいすきでむかしから夏はどうしても体力もテンションも保たないんだけど、全体的にするっと汗ばむような温度感のものが多くて思ってたより入り込めた。きっとむかしの日本の夏ってこんな感じだったんだろうな。いいなあ。北原白秋のしっとり暗くて飄々とした怪談「影」、愛する須賀敦子のすがすがしさが満ちた「霧のむこうに住みたい」、8月や夏のイメージはぜんぜんなかったけどこうして読みなおすとひとの心のなかに広がる不可侵の夏の草原を感じてあらためて感動的なシャーウッド・アンダーソンの「紙の玉」にやわらかい光を見つつ、2025/08/14