感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かもめ通信
17
2005年に刊行された自伝 Un Pedigree の全訳。訳者あとがきや資料を除いた本篇だけなら120頁ほどと比較的薄いが読み応えはある。子どもに背を向けて遠ざかっていく親の後ろ姿や、いまではすっかり変わってしまったというパリ6区界隈の様子など、モディアノ作品の中にたびたび登場するモチーフがそこここに顔を出す。少年時代の思い出語りは時に苦しくなるほどの寂しさを感じさせるが、コレットの 『青い麦』を読んだために何日間かの停学処分を受けた…といった読書遍歴やレーモン・クノーとの交流など文学ネタも興味深い。2025/05/26
Olive
4
筆者の書籍は数冊読んでいるが付箋を少し回収した気になった。「私のものではなかったひとつの人生にケリをつけるため」時代背景や両親、そこにいた人々、モディアノの暗く孤独な生い立ちを回顧し備忘録とする作業は精神的にも辛いものだっただろうと推測する。忘れ去られたものから作品を描く彼の手法を思うと、これはただの備忘録ではなく、作者を主人公にした究極の1冊なのではないかとも思える。2025/06/30
isbm
0
★★☆2025/05/11