内容説明
政治の世界にまで影響を及ぼす科学否定、その拡大を止める反撃の提言。地球平面説、気候変動否定、コロナ否定、反ワクチン、反GMO、そして陰謀論―彼らはなぜ科学的証拠から目を背け、荒唐無稽な物語を信じてしまうのか?異端の科学哲学者が陰謀論の国際会議に潜入し、科学否定論者を直接取材。最新科学の成果も交えて彼らの本心をさぐり、現代に蔓延する科学否定/事実否定に立ち向かう戦略を考える。
目次
第1章 潜入、フラットアース国際会議
第2章 科学否定とはなにか?
第3章 どうすれば相手の意見を変えられるのか?
第4章 気候変動を否定する人たち
第5章 炭鉱のカナリヤ
第6章 リベラルによる科学否定?
第7章 信頼と対話
第8章 新型コロナウイルスと私たちのこれから
著者等紹介
マッキンタイア,リー[マッキンタイア,リー] [McIntyre,Lee]
1962年生まれ。哲学者。ボストン大学研究員(科学哲学・科学史センター)
西尾義人[ニシオヨシヒト]
1973年生まれ。翻訳者。国際基督教大学教養学部語学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
140
人は誰も自分は他者より優秀であり、金と権力を持つ存在であるべきと願う。しかし現実は容赦なく、己の無能と貧困と無力を日々思い知らせる。こんなはずではない、自分は正しく世界が間違っているとの思いに囚われたところに地球は平面だとか温暖化は起こっていないとの主張を「科学は闇の世界政府による陰謀論」と共に囁かれると、自分は世界の真理を知っているとのプライドに取り憑かれる。プライドの根源たるアイデンティティを守るためなら、エビデンスなど無意味だ。そんな人を説得する様々な手法を提示しているが、無駄な努力としか思えない。2024/07/18
ふみあき
80
否定論者は帰納的推論による科学的仮説に、数学のような演繹的推論による学問と同じ確実性を求めるが、それは完全な間違い。科学は反証できても証明できない、というのを文系バカの私は改めて認識した。またGMO(遺伝子組み換え作物)を全面禁止したら、より多くの農地が必要になり、森林伐採のため炭素排出量が増加するとか、いろいろ勉強になった。が、社会的分断を招いた諸悪の根源はSNSであり、否定論者を説得できる唯一の方法は、敬意と謙虚さに基づいた膝詰め談判だという、全うだが前途遼遠(と言うか実現困難)な提言はどうだろうか。2024/07/05
HANA
68
科学否定論者の実態をルポした本かな。と読みだしたのだが、実際は科学肯定の立場から彼らを説得するための方法論を書いた一冊であった。そのため第一章の地球平面論者の集まりに潜入した部分は面白いものの、残りの部分は概念的で退屈。ただ炭鉱関係者と温暖化について話したり、リベラルと遺伝子組み換え作物についての議論は興味深かったかな。特に後者は東日本大震災後の放射能を巡る狂騒を思い出させる部分があるし。あと著者がリベラルのせいか保守に否定論者が多いような書き方だが、本邦の場合左に多いようなイメージが個人的には強いです。2024/07/06
くさてる
31
地球平面説、気候変動否定派、遺伝子組み換え食物反対といった様々な分野の科学否定論者と向き合い、かれらを説得するにはどうしたらいいかをまさに体当たりで考えてみた著者。SNSにいくらでも溢れているあの人たちを説得するなんて不可能に近いんじゃないかと思ってたら、本当にそんな感じで、直接対話のあたりは読んでいてスリリングでした。「悪役は自分の物語では常に正義の味方である」まさにまさに。ときに自分のやり方を反省しながらも、科学否定論者が生む弊害を無視できず対話を求める著者の姿勢は誠実で、読み応えある一冊でした。2024/09/03
ばんだねいっぺい
30
Xを眺めていて、肯定派と否定派そしてわからない派がいて、事実と意見の隔たりのなかに、藁人形論法だったり、陰謀論への傾倒だったり、自称専門家への追随など、いろいろと発見できるのをこの本を片手に気がつかせてもらった。人は議論ではなく物語に説得させられるという言葉に心から納得した。2025/01/11