出版社内容情報
幻のモダニズム作家、奇跡のオリジナル作品集!左川ちか、稲垣足穂、萩原朔太郎、川端康成などが高く評価し、第一回芥川賞の候補作になった幻の作家。選者は、上林暁など今読まれるべき作家を現代の若い読者に紹介する「古本ソムリエ」として人気。衣巻省三は長年紹介したかった作家で、内容から装幀まで全面協力。
衣巻省三(1900-1978)は、川端康成や室生犀星など錚々たる作家が暮らした馬込文士村の一員として、盟友・稲垣足穂とともに幻想味のある作風が高く評価されたモダニズム作家である。長篇小説「けしかけられた男」は第一回芥川賞の候補作になるも、これまで幻の作家とされてきた。北園克衛、左川ちかなどモダニズム文学が読み継がれるなか、マイナーポエットの雄として熱心な読書通から注目が集まっている。
幻想味とともにYA小説に近い作風には独特の味わいがあり、いま読んでも不思議と古さをまったく感じさせないのは普遍的なノンシャランを描いているからであろう。これまで稲垣、左川、北園のほかに萩原朔太郎、伊藤整、川端康成などが高く評価し、意外なところでは名フォーク歌手の高田渡が衣巻にオマージュを捧げている。ボン書店などから刊行された著作はいずれも稀覯本となっており、容易に読むことができない状態が続いていた。本書は古本ソムリエ・山本善行氏の選による、令和の世に贈る奇跡のオリジナル作品集である。
近年は衣巻と同時代を生きた左川ちかや上林暁などモダニズム文学がブームになるなか、「次に来る作家」として注目が高まるはずである。
【著者紹介】
衣巻省三
詩人・小説家。兵庫県に資産家の子弟として生まれる。中学時代に稲垣足穂と親友になり、二人で佐藤春夫に師事。早稲田大学中退後に詩人としてデビュー、伊藤整、左川ちか、北園克衛らと文学運動を展開。しだいに創作に移り、抒情小説/モダニズム/幻想文学など幅広い作風のもと清冽な魅力にあふれた作品群を発表。第一回芥川賞候補になった長篇『けしかけられた男』(1935-36年)はジッドばりのメタフィクションで、川端康成が評価するも受賞を逃す。大正末から住んだ馬込文士村の邸宅には稲垣足穂が居候。近所の萩原朔太郎、室生犀星などと親しく交わり、朔太郎のエッセイにも描かれる。戦後は寡作となり、しみじみした味わいの随筆などを同人誌に発表した。【生前の単行本】(1928年~1937年)小説『黄昏学校』(版画荘)、『パラピンの聖女』(金星堂)、詩集『こわれた街』(詩之家出版部)、『足風琴』(ボン書店)
山本善行
大阪府生まれ。古書店「古書善行堂」店主、書物雑誌「sumus」編集人代表。著書に『定本 古本泣き笑い日記』『関西赤貧古本道』など。編書に『上林暁傑作小説集 孤独先生』『上林曉傑作小説集 星を撒いた街』『文と本と旅と 上林曉精選随筆集』「灯光舎 本のともしび」短編集シリーズ(寺田寅彦、田畑修一郎、中島敦、堀辰雄、内田百閒)など。共著に『漱石全集を買った日』『新・文學入門』などがある。
内容説明
都会的な幻想世界を絶賛されたモダニズム作家、衣巻省三。その魅力を伝える約90年ぶりの作品集。表題作ほか中短篇小説、詩集を収録。
目次
こわれた街
足風琴
プリマドンナ
ポオの館
雨の街
落ちたスプウン
どこの町
キッドの靴
陋巷
街のスタイル
歪められた景色
感想・レビュー
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