内容説明
母親は井戸に飛び込み、祖父は自分を殺そうとする。寒村に生きる少年の目に鮮やかに映しだされる、現実と未分化なもう一つの世界。ラテンアメリカ文学の魔術的空間に、少年期の幻想と悲痛な叫びが炸裂する!『めくるめく世界』『夜になるまえに』のアレナスが、さまざまな手法を駆使して作り出した奇跡の傑作。
著者等紹介
アレナス,レイナルド[アレナス,レイナルド] [Arenas,Reinaldo]
1943年、キューバの寒村に生まれる。作家・詩人。1965年、『夜明け前のセレスティーノ』が作家芸術家同盟のコンクールで入賞しデビュー
安藤哲行[アンドウテツユキ]
1948年、岐阜県生まれ。ラテンアメリカ文学研究者。摂南大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふるい
6
めくるめく創造と破壊の世界。五部作の第一作目であり、アレナスのデビュー作でもある。第二作目の邦訳がもうじき出るとのことで、そちらも読んでみたい。2023/10/27
ぎじぇるも
3
暴力と貧しさと死が支配する世界の詩。後書を見ると全てではないが、40%〜60%くらい自分の経験を元にしてると思われる。壮絶な過去だ。キューバの寒村。作者は幼少期から少しナヨっとしてるタイプの子供でマチスモが激しいラテアメ世界では許されずにじいちゃんにボコボコにしれてたんだろうな。アチャスアチャスアチャスアチャスという言葉は今後は私も使っていこうと思う。宮崎駿の君たちはどう生きるかを読んでいる時に見たが、この小説のおかげでストーリーの断片的な記載や詩的なイメージの映像化について頭にテンプレートが入っていたの2023/07/18
Э0!P!
2
私は私を分割する。愛されるべき私、碌に仕事ができず家族に優しくされない私、男なのに詩を書き連ねる女々しい私。それぞれの私がそれぞれの物語を生きる。私は、詩を愛する私自身を最も愛するが、その愛には母すらも嫉妬をみせるほど。私は家族を複製する。私を蔑み憎む家族。私を愛する(理想上の)家族。そして私は死と合一する。永遠の生と合一する。私は大人になる。2024/06/17
kumoi
2
現実が妄想を飛び越えてしまい、もしかしたら私が見ている現実も自分自身で作り上げた妄想なのではないか。そう思わずにはいられない小説だった。シーンや会話が積み重なりフィナーレを迎える物語とは異なり、ひどく断片的なシーンが散らばっており、語り手の主観の世界なのかそれとも客観的な事実が述べられているのか読み手は道に迷う。そしてその迷いこそ、語り手の迷いであり私たちの迷いであることに気づくのだ。アチャスアチャスアチャス。現実を把握し、意思を提示せよ。2024/04/11
あるぱか
2
アチャス! アチャス!2023/08/21