内容説明
アメリカの天才物理学者ルーカス・マルティーノは、自らが立案した極秘のK88計画の実験中に大爆発に巻き込まれ瀕死の重傷を負った。事故の起きた研究所が、連合国支配圏とソビエト社会主義国支配圏の境界近くにあったため、マルティーノはいちはやく現場に駆けつけたソビエト側の病院に収容されてしまう。そして3か月後、外交交渉の末、マルティーノは解放されることになる。だが国境線の検問所のゲートから現れたのは、卵型の金属の仮面をつけ、体のほとんどが機械で出来た、変わり果てた姿のマルティーノであった!果たして彼は本物のマルティーノなのか、それとも別人なのか、本物であれば洗脳されているのではないのか、解放したソビエトの意図とは?解放に立ち会った中央ヨーロッパ国境地区の保安責任者ショーン・ロジャーズは、様々な方法でこの人物の正体をつきとめようと試みるもののことごとく失敗に終わる。その後、新たにマルティーノの追跡調査担当者に任命されたロジャーズは、マルティーノをニューヨークに送り届け、彼を泳がせ、その行動を追跡することで正体に迫ろうとするが…。全編に緊張感をみなぎらせ、独特の抒情を漂わせつつ展開する、SF界の巨匠バドリスの代表的長編SFスパイ・スリラー。
著者等紹介
バドリス,アルジス[バドリス,アルジス] [Budrys,Algis]
1931‐2008。アメリカのSF作家、批評家。東プロイセンのケーニヒスベルク(現在のカリーニングラード)で生まれる。リトアニア系。父はリトアニア政府の総領事で、バドリスが5歳の時、一家はリトアニア政府によってアメリカに送られた。マイアミ大学、次いでニューヨーク州のコロンビア大学で教育を受けた。最初に活字になったSF作品は、1952年に『アスタウンディング』誌に掲載されたThe High Purposeであった。1960年の中長編『無頼の月』はヒューゴー賞の候補となり、後にアンソロジーThe Science Fiction Hall of Fame,Volume Two(73)に収録された。『誰?』(58)は、1973年にエリオット・グールド主演で映画化された。ヒューゴー賞、ネビュラ賞の候補に何度もなったほか、SF研究協会のSF小説分野における生涯にわたる功績を記念して与えられるピルグリム賞を2007年度に受賞、また2009年に、SFファンタジー作家協会のSF小説への長年の貢献に対して与えられるソルティス賞の最初の三人に選ばれた。小説の執筆以外にも、出版、編集、広告の仕事に携わり、SF界最高の批評家としても知られた
柿沼瑛子[カキヌマエイコ]
翻訳家。早稲田大学第一文学部卒業
山口雅也[ヤマグチマサヤ]
早稲田大学法学部卒業。大学在学中の1970年代からミステリ関連書を多数上梓し、89年に長編『生ける屍の死』で本格的な作家デビューを飾る。94年に『ミステリーズ』が「このミステリーがすごい!’95年版」の国内編第一位に輝き、続いて同誌の2018年の三十年間の国内第一位に『生ける屍の死』が選ばれKing of Kingsの称号を受ける。95年には『日本殺人事件』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞。シリーズ物として“キッド・ピストルズ”や《垂里冴子》など。その他、第四の奇書『奇偶』、冒険小説『狩場最悪の航海記』、落語のミステリ化『落語魅捨理全集』などジャンルを超えた創作活動を続けている。近年はネットサイトのGolden Age Detectionに寄稿、『生ける屍の死』の英訳版Death of Living Deadの出版と同書のハリウッド映画化など、海外での評価も高まっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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