感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
17
まさに「スケッチ」と呼ぶしかない、ジャンルはなにかと問われるとちょっと困ってしまう、でも印象に残る気の利いた短篇が詰まっています。ドロシー・パーカーの二作がとても好き。とりわけ「電話をください」は、同じような状況に陥ったことのあるひとならば、みな笑って、そしてやるせなく寂しい思いになってしまう傑作だと思います。同じような男女の機微を描いた「別れ」も好きです。2022/08/03
Inzaghico (Etsuko Oshita)
8
ドロシー・パーカーの「電話ください」は、待ち人(おそらくは思い人)からの電話を、電話機を前に待っている女性の心の声だけで構成されている。固定電話を前にして、やれ「500まで数える」だの、電話が来ない理由をあれこれ並び立てるだの、懐かしいったらありゃしない。自分からかけるのは「負け」なので、意地でもかけない。5時に電話するといわれて7時10分まで待ってもかかってこなかったら、冷静に考えれば脈なしなのだが、恋は盲目、そんなことなど頭に浮かびもしない、というか、意地でも認めないのが、いじらしいではないか。2023/01/26
スターライト
6
1920年代から1930年代にかけての「アメリカン・ユーモアの黄金時代」に発表された作品を中心に、「洒脱でナンセンスで陽気でハイブロウで皮肉が効いて、なにより笑える読み物」(本書帯文)である〈ユーモア・スケッチ〉の展覧会、第3弾。登場人物にとっての災難・トラブルが、手練れの作者にかかれば思わずニヤリとしたりほほぅと感心したり(?)のシーンに早変わり。対話形式で物語が展開するもの、脚本形式で読者を楽しませるもの、当時流行したもののパロディなど読者を飽きさせないバラエティ豊かな作品群。笑いのエッセンスがここに2022/03/17
tomo6980
2
お気に入りの1篇、「絵になるタイプ」のコーネリア・オーティス・スキナーの作品に『わたしたちは若く陽気だった』というものがあるそうな。これがユーモア・スケッチを説明するのに一番の言葉かもしれない。特に20年代に書かれたものに関しては。後の恐慌、大戦と続く時代を考えれば特に。2022/04/16