内容説明
都市幻想を描く「町の底」、ゾンビの愛の物語「グレー・グレー」など、伝説的な怪奇恐怖小説集『抒情的恐怖群』の全7編に、「闇の司」「水漬く屍、草生す屍」「かごめ魍魎」など5編を増補。「ホラーの古典的素材を昇華させ、巧緻な語りの技術で幻惑的な幻想小説に仕上げた」と絶賛された、鬼才・高原英理のホラー小説を集大成。
著者等紹介
高原英理[タカハラエイリ]
1959年生まれ。著作に、『観念結晶大系』『歌人紫宮透の短くはるかな生涯』ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
72
怪奇でも怪談でもなく、収められているのはあくまで「恐怖」。著者の抒情的な切り取ったような文体で各話描かれているのだが、抒情的なのは「グレー・グレー」だけで他は確実に読者を殺しにかかっている。著者の今までの作品を念頭に置いて読み始めたら、冒頭の「町の底」が扱っている題材で一撃され、次の「呪い田」の理不尽さでもう一撃喰らう。後半に入っても「よくない道」で人倫を踏み外した道に迷い込まされるし。読み終えた今郷愁と抒情とグロテスクで、頭が混乱している。しかし著者の文体でグロやられると、違和感で一層衝撃受けるなあ。2021/10/04
カフカ
69
まさしくホラーというより「恐怖譚」という言葉がよく似合う短篇集。高原さんの淡々とした筆致がやけに怖い。けれど恐怖を感じつつも、どこか美しさを感じてしまう自分がいたり…。一番恐怖を感じたのは「かごめ魍魎」。恐怖はずっと傍にいた、というのが震えます…。ちょうど深夜に読んでいたのですが、その晩は無事に悪夢にうなされました。海から無数の手が伸びていて、引きずり込まれる夢でした。そんなこともあり、忘れられない本となりそう。山本タカトさんの装画や漆黒で重々しい装丁がすごく良くて、本棚に置いておくだけで大満足な一冊。2023/01/21
あたびー
48
#日本怪奇幻想読者クラブ 装丁の美しい本なのです。滑らかな紙なのに、ベルベットを思わせる黒です。そこに焦点の定まらない眼をした美しい少女の(おそらく生)首が薔薇の花と(たぶん)鳥の骨に囲まれて浮いている、そういう絵が置かれているのです。また紙が大変に上質で。力を入れて押さえていないと頁が勝手に戻ってしまいそうで。そこに収められた四節十二の物語はいずれも美しい文章で血や体液を滴らせたものたちのことが綴られているのです。読んだ後には頭が眩んでちょっと物が考えられない位です。寝転んで読むと少し筋肉もつきます。2021/10/14
柊渚
25
骨の散らばるアスファルトの地面の上、灰茶色の夜空の下、もっと話そう、もっと。ゾンビとなってしまった恋人、それでもなお愛し続ける男を描いた幻想的な物語『グレー・グレー』をはじめとする怪奇恐怖小説集。噎せ返るような血肉の匂いと美しさに酔いしれる。12月読了本なのですが、たぶん昨年読んだ中で一番怖かったかもしれない…笑。そしてかなりグロテスク。けれども美しいのです。加えて素敵な装丁に、山本タカト氏……!もう、最高やん…と寝転びながら胸に抱こうとすると460頁の重みがのしかかってくる、そんな作品でした(大満足)2021/12/20
アカツキ
13
「抒情的恐怖群」7作品に各所で掲載された5作品を追加した、計12作品収録。江戸川乱歩的なエログロ+ホラー。猟奇的な描写が光っていて心がグワッと掴まれるけれど、ストーリーや結末がもうひとつ付いていけてないと感じる作品がちょいちょい。特に好きな作品は、死が伝染していく「呪い田」、ロマンチックなゾンビホラー「グレー・グレー」、女の暗い欲望「影女紗」、わるい人が吸い寄せられる「よくない道」。地図に載らぬ空白地と凄惨な連続殺人「闇の司」は「凄いけれどそれ以上がない」という評は的確。好きだけど推せない。2021/11/21