内容説明
至高の幻想小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いやしの本棚
18
「私はここに居て」どこからかやって来た鳥を見る。鳥は、作者が読者の内部空間へ向けて放ったこの物語だ。去勢された男、纏足された女、男色、ホムンクルス…素材は美しく悲痛だが、「人形劇のように」生々しさはない。一瞬ののちに「鳥はとび去り」私は残される。語り手であるポレが去勢された男であるため、人間がもってうまれた性別、欠けてしまった肉体の機能と快楽について繰り返される。読んでいるうちに、佐藤弓生さんの一首を思い出した。「たましいに性器はなくて天国の子はもうどんな服でも似あう」(佐藤弓生『薄い街』より)2019/05/26
rosetta
17
★★★☆☆記念すべき読メ1000冊目だが何にも感想がない(笑)中国らしき漢字文化の日の昇る国の皇帝の身代わりになって陽の沈む教皇領に入り、どうやら宮刑にされたらしき主人公。有力者の家で西から来た人形芝居の老人と会い興味を持つ。老人は神殿学校で育てられ教皇を輩出した教会の跡取りとして引き取られたらしいのだがそこにはお稚児趣味もあるような。なんか小説全体がぼんやりした印象で何一つ確かなことがないようで曖昧模糊としている。これが幻想小説風味というものなのか?いや、俺は心療内科医じゃないしこんなん聞かされても(笑2019/07/15
しらぞう
16
読書会で知った作品、普通には絶対に手に取らないであろう作品なので、敢えて読んでみた。登場人物の繊細な心理描写や宗教観(存在を信じていない神をなぜ必要とするのか)、独特な性的テーマなどに包まれている。冒険仕立てのストーリーには、少しドキドキさせられるが全体としての意味は分からない(意味はないのかもしれない)。考えないで浸ってみた。読了した今の心境は、目覚めた時に「心地よい夢だった。何の意味があるかはわからないけど」という感じ。2020/01/25
belle
5
運河に囲まれた水辺の街で語られる幻想譚。その舞台設定のためか、さらさらと流れ、過ぎて行く印象。時代は、~リュートを弾きながら詩の朗誦をした~とあるから、ルネサンスからバロックあたりか。表紙カバー絵もそんな感じ。秘密めいたことや怖いことも語られながら、暗さはあまり感じない。教皇庁の使者が登場し、その目的をおぼろげに察してからも、読者の私はさらさらと読み進む。鳥は羽搏いたのだろうか。2019/11/12
rinakko
4
再読。大変好みな幻想小説。『祈りの島』のために先に読み返したら、断片的にしか覚えてなかった… “書物を読んで頭の中に生じるものは、模型のようなものなのだ。好みに添うよう変形を加えられた模型。さらにそこに好悪や個人の思いが加わるなら、元の形を想像することすら困難なほど奇怪に歪んだ、あるいは逆に驚くほど美しい形に他者からは見えるものかもしれない。そして恐ろしくも滑稽なことに、当の本人は自身のこしらえた模型をしごく正常(まっとう)なものとして、他人には異(ちが)って見えることがある、などとは考えもしないのだ。”2023/07/21