内容説明
ロンドンに近い田舎町で、雌ライオンが見世物小屋から逃げ出した。友人と郊外を散策していた青年アンソニーは、雌ライオンが人を襲う瞬間を目撃する。しかしその直後、咆哮する獣は巨大な雄ライオンになっていた…謎の導師によりプラトン的イデアが現世に召喚され、住人たちは己の本質を体現する〈天使〉に引き寄せられていく。侵食される現実世界を救おうとするアンソニーの前に現れる驚愕のヴィジョンとは―C・S・ルイスを魅了し、T・S・エリオットに賞賛された希代の幻視者ウィリアムズによる〈神学的スリラー〉にして〈形而上学的ショッカー〉がついに刊行!(1931年作)
著者等紹介
ウィリアムズ,チャールズ[ウィリアムズ,チャールズ] [Williams,Charles]
1886年ロンドン生まれ。ロンドン大学中退後、1908年からオックスフォード大学出版局で働き始める。編集者として働く傍ら、30年に第一長篇War in Heavenを刊行。以降、本書や『万霊節の夜』など独特の思想や特異なヴィジョンを盛り込んだ小説を次々に発表、C・S・ルイスやT・S・エリオット、W・H・オーデンらと親交を深める。詩、詩劇や文芸批評、神学論など数多くの著書を遺した。1945年死去
横山茂雄[ヨコヤマシゲオ]
1954年大阪府生まれ。京都大学文学部卒、博士(文学)。英文学者・作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sugsyu
1
形而上学的存在が地上を闊歩する…チェスタトンと黒沢清の中間、ともいうべき神学的ホラー。プラトニズム研究者なのに、超越的なものをなにも信じていない石頭なリアリスト、というヒロインの造形が面白い。タイトルといい、天を埋め尽くす蝶の群、天を衝き無限に燃え続ける炎の柱など、怖ろしくも壮麗なビジョンの数々も魅惑的だ。2025/05/14
z
1
私は果たして何を読んでしまったのだろうか…。ロンドン近郊の何気ない日常に、ライオンどころか想像も及ばないものがあれこれと溢れ出て、そこに恋愛や友情、アクションまで取り込むのに、根っこにはまるで理解の追いつかない神学、哲学が横たわっている…。 ウィリアムズの既訳『万霊節の夜』について、かつて平井呈一が翻訳を試みたがとても及びつかずに諦めた、とその昔書いていたが、どうやってこんなものを…という注も含めて、この翻訳もとんでもないレベル。2025/05/25