出版社内容情報
大正・昭和のモダン都市東京を放浪し、特異な版画作品を数多く残した〈風船画伯〉谷中安規の全貌をかつてない規模で集成。
大正・昭和のモダン都市東京を放浪し、特異な版画作品を数多く残した〈風船画伯〉谷中安規の全貌をかつてない規模で集成。新発見の作品も収録した決定版画集! 内田百?閨A佐藤春夫らが愛した奇人版画家の知られざる全貌。
芥川賞作家・藤野可織のコラムも収録。
【著者紹介】
渋谷区立松濤美術館主任学芸員。
内容説明
大正・昭和のモダン都市東京を放浪し、特異な版画作品を数多く遺した“風船画伯”谷中安規の全貌をかつてない規模で集成。新発見の作品も収録した決定版画集!作家・藤野可織氏によるエッセイ収録。
目次
第1章 大正デカダンスの長い助走路
第2章 モダン都市とマシンエイジ
第3章 ストーリーテラー
第4章 文学者たちと挿絵
第5章 楽園を夢見る子供たち
著者等紹介
瀬尾典昭[セオノリアキ]
1955年生まれ。渋谷区立松涛美術館学芸員
山田俊幸[ヤマダトシユキ]
1947年生まれ。帝塚山学院大学教授
辺見海[ヘンミカイ]
1972年生まれ。編集者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
53
頁を捲るなりめくるめく夢幻の世界に案内される。それが悪夢の中を彷徨うようでも、帝都東京であろうとも、鳥獣や子供が幸う楽園であろうとも、この憂世とは違う世界を存分に覗かせてくれる。風船画伯の事は百鬼園先生の随筆や『王様の背中』でしか知らなかったが、以前近くであった展覧会やこの本でその作品に触れることが出来、まさに瞠目させられた。初期の作品はどこか既知感があるなと思っていたら表現主義の影響というので腑に落ち、後記の作品では楽園に安らげる。生涯やその周辺も詳しく記され、徹頭徹尾画伯を知る事の出来る一冊だった。2016/01/26
yumiha
44
内田百閒が命名した風船画伯こと谷中安規の木版画などの画集。「狐の裁判」を安規の挿絵とともに読めたら、素晴らしいだろうと想像する。確かに異才である。そんな安規が生きた大正や昭和の様子、交流のあった作家や画家などのエピソードもあり、その作風を分析もしてもらえる。私のお気に入りは、「虎上吹笛」だ。たぶん紙一面を墨で塗り潰してから白絵具で形を描いた「紙上版画」だろう。その制作の様子を見ていた平山三郎(ヒマラヤ山系)の一文、「画稿を持って立ち上がった風船画伯は金色の羅漢だった」にも心惹かれた。2024/02/21
千恵蔵
6
『昭和二十年東京地図』で紹介されていたので、ずっと(15年くらい)気になっていた画家の全体像。決して端麗な作品は描いていないが、夢うつつを時にユーモラスに揺蕩うような、そんな印象。人間性でいうと、とてもチャーミングな、暗黒舞踏も踊る愛すべき人。2018/01/28