出版社内容情報
バベルの図書館シリーズ、ドイツ・イタリア・スペイン・ロシア編。カフカ、ロシア短篇集、マイリンク、パピーニ、アラルコンを収録。
怪奇と神秘に満ちた物語29編。バベルの図書館シリーズ、ドイツ・イタリア・スペイン・ロシア編。カフカ、ロシア短篇集、マイリンク、パピーニ、アラルコンの巻。「禿鷹」「ナペルス枢機卿」「精神の死」「死神の友達」ほか全29編を収録。
カフカ*池内紀訳
内容説明
恐るべき毒草の秘密と秘密結社の呪いの物語『ナペルス枢機卿』。“文学がわれわれに提供しうるもっとも賞賛に値する作品の一つ”とボルヘスが語る『イヴァン・イリイチの死』。ほか全29編を収録。
目次
フランツ・カフカ(禿鷹;断食芸人;最初の悩み ほか)
ロシア短篇集(鰐(ドストエフスキー)
ラザロ(アンドレーエフ)
イヴァン・イリイチの死(トルストイ))
グスタフ・マイリンク(J・H・オーベライト、時間‐蛭を訪ねる;ナペルス枢機卿;月の四兄弟)
ジョヴァンニ・パピーニ(泉水のなかの二つの顔;完全に馬鹿げた物語;精神の死 ほか)
ペドロ・アントニオ・デ・アラルコン(死神の友達;背の高い女)
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
20
トルストイ「イワン・イリイチの死」とドストエフスキー「鰐」ともに再読だが、並べて読むと両者の個性の違いが鮮やか。煉瓦を一つずつ積むようにして一官吏の栄光と淪落を描く前者と、はじめのほうでいきなり一官吏を抱腹絶倒のシュールな極限状況に陥れる後者と。鰐の腹の中でなおも御託を並べるさまが可笑しい。「鰐」の前にカフカの不条理的な掌編群が置かれる排列も、二十世紀を先取りしたようなこの短篇の特徴を際立たせる。明治に初めて独訳からこれを訳した森鷗外(表記は「鱷」)の炯眼に驚かされる。 2017/01/09
roughfractus02
6
境界はこちらとあちら、以前と以後の間にある。それはドイツ(詳しくはチェコとオーストリア出身)、ロシア、イタリア、スペインの、ユーラシア大陸を区切られた自身の不可視の境界を横断していく。境界は、半分は猫、半分は羊の生き物(「雑種」)、手紙の返事が来ない男(「きみは誰なのか?」)、あちらに侵食される現実(「ナルベス枢機卿」)のように「〜でない」何かとして現れ、さらに見る者自身の死に転移して、鰐に呑み込まれてその腹の中で生きる男(「鰐」)や自殺する寸前に友達のように現れる男(「死神の友達」)によって体験される。2020/03/11
Susumu Kobayashi
6
本巻にはドイツ、ロシア、イタリア、スペインの作家を収録。他の作家の中に混じると、カフカは印象が薄くなってしまった。「鰐」は、ドストエフスキーにこんな作品があったのかと驚かされた作品。鰐を見物に来た男が鰐に呑まれ、鰐の腹の中で生活を続けるというもの。対照的にトルストイ「イヴァン・イリイチの死」はリアリズムだが、こういう機会に読めて良かった。マイリンクの短篇3作はいずれも面白かった。パピーニというイタリア作家の短篇や、「三角帽子」で有名なアラルコンの短篇が読めるのはこの本だけなので貴重。2015/11/05
ユッチー
1
マイリンク目当てで読んだが、カフカ、ロシア短編集、パピーニ辺りが面白かった。 特に、ドストエフスキーとトルストイの短編は一級品。2022/09/01
Biofeedback1961
1
フランツカフカ。 『禿鷹』2ページの小品。素晴らしい。 『万里の長城』というのもある。 『雑種』半分は猫、半分は羊という変なやつ。 フョードル・ドストエフスキー。 「鰐---ある異常な出来事、或いはアーケード街の椿事』 未完の作品であるらしい。こういうのあるのかな。2022/03/09