内容説明
事情を抱えて港町に流れ着き、水夫の職にありついた男は、週に一度、荷物の詰まった箱を沖の灯台まで運ぶ仕事を命じられる。無人と思しいその灯台には、生まれてから陸の世界を知らずに暮らす者がいることを知らされる。「ひとりぼっち」氏と呼ばれる灯台守に対し、同情と共感が混じった思いを水夫は抱き始める。沖の灯台でひとり、想像力を羽ばたかせる「ひとりぼっち」氏の秘やかな楽しみとは…?沈黙の余白、黒い言葉、多彩なグラフィックが目くるめくバンドデシネ作品。
著者等紹介
シャブテ,クリストフ[シャブテ,クリストフ][Chabout´e,Christophe]
1967年フランス・アルザス地方生まれ。現在、注目されているBD作家のひとり。アングレーム、ストラスブールの美術学校に学ぶ。1993年、アルチュール・ランボーの選集『Les R´ecits』にて画業デビュー。98年、パケ社より刊行した『ある夏の日々Quelques Jours d’´Et´e』が翌年のアングレーム国際マンガフェスティバルにて「心臓の鼓動賞」(Alph’Art coup de coeur)を受賞
中里修作[ナカザトシュウサク]
1976年東京生まれ。翻訳家。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程前期課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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miyu
30
地味な絵柄でモノクロがまるで版画のようだ。醜い容姿に生まれたせいで両親が誰にも会わせずに育て、彼ら亡き後はたった一人灯台で暮らす、その名も「独りぼっち」氏(推定年齢50歳)。魚を釣り、そして辞書を落として適当に指さした単語を読む。そこから少ない知識(外に出たことがないからほぼ無い)を駆使して想像する。彼の毎日は外の世界を想像して過ぎてゆく。そこへ突然現れた物資輸送船の新入り船乗り。「他にほしいものはないか」という彼の手紙に「世界の写真」と返す独りぼっち氏。彼が手にした数々の写真が鮮やかな色で溢れて見えた。2018/05/01
、
6
バンドデシネ。大学に入ってバンドデシネを知ってから、色々読んでる。これはすごく余白の使い方がうまいと思う。コマ割、構図、コマの中の余白が映画みたいでオシャレ。ネタバレ→彼が外界へ出るときの気持ちって、知らないが故の美しい好奇心かなあ。私は読んでる途中から彼は最後殺されるのかなと思ってしまった。(作者によってね)集団主義社会に住んでるからの発想なのかな…結末を見て、ああ、素直にそう持っていっていいのかと、さっぱりした。結構好き。2013/12/10
モッタ
6
★★★★★ 再読。表紙がなんと言ってもかっこいい。そして、大きさもあって重量感もあって。部屋に面で飾ってます。2011/10/18
印度 洋一郎
5
海の中にぽつんと佇む灯台でひっそりと暮らす男。外界を知らず、一冊の辞書の言葉を見てはあれこれと想像する。そんなミニマムな世界を台詞に頼らず、画の力で淡々と、しかし深く描いたBD。一人のキャラクターの余り変化も無い地味な日々を描きながら、画の構図で色々な事を饒舌に語っているのが圧巻だ。ひとりぼっちと呼ばれる男と、彼に食料を運ぶ水夫との、互いに顔を合わせることも無い、ほのぼのとした関係もじんわりくる。水夫と口の悪い船長とのワケアリそうな関係も、滋味深い。 2012/08/18
かっぱ
5
フランス作家の漫画作品。灯台で独りで暮らす「トウ・スール(ひとりぼっち)」氏が主人公。世界を知る手掛かりは1冊の古びた辞書。辞書の言葉と意味から、見たことのない様々なものを想像する。想像力はやがて現実世界を変える力を持つことになり、「ひとりぼっち」氏に外の世界への旅立ちを決意させる。さてその先には何が待っているのか。ただ、現実の世界を知らない彼の想像する世界がおもしろく、知ることによって失われるものについて考えさせられる。2011/07/02
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