内容説明
コナン・ドイルの友人で、ホームズもののパロディでも知られるロバート・バーの傑作短篇集、待望の初邦訳!エラリー・クイーンや江戸川乱歩が絶賛し、夏目漱石の作品にも登場する名作「うっかり屋協同組合」を含む全8篇を収録。
著者等紹介
バー,ロバート[バー,ロバート][Barr,Robert]
1849‐1912。イギリス、バロニー生まれ。カナダで育ち、アメリカで新聞記者を勤める傍ら作家となる。イギリスに戻ったのち「アイドラー」誌を創刊。編集者、作家として活躍した。コナン・ドイルとも親交があり、「ルーク・シャープ」名義でホームズもののパロディも執筆している
平山雄一[ヒラヤマユウイチ]
1963年、東京生まれ。東京医科歯科大学大学院歯学研究科卒、歯学博士。日本推理作家協会、「新青年」研究会、日本シャーロック・ホームズ・クラブ、ベイカー・ストリート・イレギュラース、ロンドン・シャーロック・ホームズ協会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
30
名探偵には語り手がつきものだ。シャーロックにはジョン・ワトソン、エルキュール・ポアロにはヘイスティングス。しかし本編は探偵自らが語る。ほほぅ、珍しい。さては連戦連勝の名探偵なのか。ところが、「我輩」と自らを呼ぶウジェーヌ・ヴァルモンは、のっけから「ダイヤモンドのネックレスの謎s」事件でミスをしてフランス警察をクビに。イギリス警察のやり方が何かにつけて気に入らず、事あるごとに彼等への不満を語る。第三者から見ればウジェーヌの方がよっぽど危なく見えるが探偵らしい勘を働かせている事件もあり食えないキャラクターだ。2015/12/19
紅はこべ
29
日本では漱石経由で有名な「放心家組合」の作家の短編集。主人公のヴァルモンはフランス人の国民性を高く買い、英国人の知能や性質を憐れみながら、その英国人にコロリと騙される、可愛げのある迷探偵。ワトソン役の語り手は用いず、探偵視点で語っているが、その自画自賛の自分以外は全て下に見る語り口は笑いを呼び起こさずにおれない。ヴァルモンが英国警察の令状発行の手順を重んじ、容疑者の権利を保護する方式に憤る点にも笑った。当時のフランス警察ってそんなに乱暴だったのか?2010/12/05
歩月るな
14
「首になった理由は無実の男を逮捕したからではない。そんなことは何十回もやっておったが、なんの文句も言われたことはなかった。どんな刑事だって失敗しようと思って失敗しているわけではない。」2010年ついに訳出された本。語り手でもある探偵、ヴァルモンは自身がフランスを離れる事になる失敗談から始める。話の枕、脱線の技術は完全に『ボートの三人男』そのままであり、ホームズの真に逆を行くライバルとも言える。元はアメリカで先行発表されている複雑な背景を含め、その滑稽な手法は慣れが必要かもしれないが、面白さはトップクラス。2018/08/26
きりぱい
8
パリで刑事局長だった男がロンドンで探偵!?ホームズもどきかと思い、話が王妃の首飾り絡みときてはルパンもどきかとも思い、一体このヴァルモン、うかつなのか切れ者なのか、タイトルの勝利というのには疑問符ながら、変わった依頼にお手並み拝見となかなか面白かった。イギリス流の手ぬるさをこぼすなど、捜査体制の英仏の違いが興味深く、国民気質も際立たせる。解説によると、ドイルと懇意にしていたそうで、他にもポアロの原型説だとか、漱石も作品で触れていたとか、色々、へえ!爆弾、チゼルリッグ卿、ワイオミング・エドの話が好み。2012/12/14
ロピケ
7
パリからロンドンに移り住んだヴァルモン。フランスと比較し、イギリスの捜査方法の非効率について事あるごとに、ため息をつく。それでも、イギリスになじもうとする努力は見えるし、人情に弱いところもあり、魅力的な人物。ポアロの原型?とも言われるところも分かるような気がする。展開の仕方がそれぞれ面白い。気に入ったのは「レディ・アリシアのエメラルド」。やっぱりハッピーエンドに弱いです。すり替えた爆弾も好きだし、「二枚の紙のあいだ」もすごく良いアイディア!2011/02/22