内容説明
執念の鬼と化した人間と人間との、凄絶なる葛藤絵図―物語として美化され伝えられてきた“敵討ち”を史実にのっとって再構成し、冷徹な筆致で描いた著者晩年の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ukiyo_san
3
傑作。優れた歴史小説は凡百の歴史研究よりも遥かに豊かで有機的なイメージを与えてくれるということを明証している。時代小説にありがちな、痛快さを見せるために筆が滑るということは殆ど無く、史料や先行する仇討ち物を丹念に研究した跡が窺える。現地にも自ら足を運んだに違いない。そして、自制のきいた筆致でありながら、各編色合いが異なってそれぞれ味わい深い。毎夜一話ずつ楽しみたい、そんな傑作。2014/01/12
クロネコ
2
面白かった。敵討ちのなかでも異様なものを集めて、主観を抑えた文章で書かれたまさに異相は迫力がすごい 日本人がこんなにも復讐に人生をかける時代があったのだとカルチャーショック。2019/11/16
にかの
2
「敵討ちは日本人が発明した不思議な『正義』の手段である。身近な人間を殺されて仇を討つわけだが厳しいルールがあった。最も異様なのは『理がどちらにあり非がどちらにあったのか』を問わないこと。討つ者は善人で討たれると悪人になる。」という某氏の評論が示す通り、この本には日本の特殊な風習であった敵討ち、そのなかでも著者である長谷川伸氏が選りすぐった実例を取り揃えた本です。池波正太郎が師事したことのあるほどの方なので腕は確か。簡潔でわかりやすい文章のなかに読む人をその世界観に引きずり込む深さがある一冊です。2012/09/15