内容説明
縞の合羽に三度笠、軒下三寸借り受けての仁義旅―渡世人の意地と哀歓を鮮やかに描く股旅小説の決定版!短篇集「股旅新八景」に傑作中篇「人斬り伊太郎」を合わせた全九篇を収録。
著者等紹介
長谷川伸[ハセガワシン]
1884‐1963。横浜生まれ。小学校を中退し、土木請負業の現場小僧や鳶人足など職を転々とし辛酸をなめる。二十歳のとき横浜新聞社に入社、都新聞に転じ、かたわら創作を開始。菊池寛に認められ「夜もすがら検校」によって文壇の地位を築く。昭和3年に発表した「沓掛時次郎」で、いわゆる“股旅”ものの流行作家となる。代表作「瞼の母」「一本刀土俵入」「関の弥太ッぺ」などは今に至るまで繰り返し上演・映画化されている。長篇『荒木又右衛門』(昭和11年)以降、史伝物にも筆を進め、『日本捕虜志』『日本敵討ち異相』などの傑作を発表した。「二六日会」「新鷹会」といった勉強会を自宅で開いて、大衆作家の育成に尽力し、ここから村上元三、山手樹一郎、山岡荘八、池波正太郎、平岩弓枝らが育った(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kayak-gohan
20
本作に登場する主人公は、どうしようもない男たちばかり。やっていることといえば喧嘩、酒、博打。放縦三昧を尽くす典型的なアウトローで、その性格は短気・短絡的・自分勝手。そうでありながら、時折垣間見せる人間らしさが女たちの心を掴む。しかし、彼らの生き様は彼女たちの心情には疎い。一つ所にとどまれず旅をする彼らは、時間を経て、遠く離れてみて、それに気づきわが身の愚かしさを後悔する。作者が描いたそんな男性像が、50歳を過ぎた自分には妙に愛おしいものに感じられるのはなぜだろう。2018/09/11
マッピー
11
博奕打ちなのはしょうがないにしても、共通するのは腕がたつことくらい。やたら短気でけんかっ早いやつがいたり、サイコパスのように些細なことで人を殺して平然としていたり。必ずしも勧善懲悪でもなく、読後感がいいとは言い切れない話も多い。けれど、地の分を挟まずに2~3ページも続く会話のやり取りが実にテンポよく小気味がいいので、そして多少おバカなので、ここで笑っちゃうと大抵のことは許せてしまえる気がする。いちばん好きなのは「八丁浜太郎」。人の世の営みの前には敵討ちなんて小さなものであると、さらりと深く教えてくれる。2019/05/25
k.t
1
股旅物というジャンルをこうやって腰を据えて読んだのは初めて。今の時代に感じにくくなった義理人情や負い目といった感覚をしっかり感じさせてくれる。2015/03/30
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