内容説明
“理想形都市”崩壊の八年後、独裁者ビロウの策略で、クレイたちのコミュニティーに奇妙な“眠り病”が蔓延した。シティの廃墟に戻ったクレイは、独裁者自身も同じ病いに冒されていることを知る。特効薬の手がかりを探しに、崩壊が始まっているビロウの“記憶の宮殿”に潜入したクレイは、銀色に輝く“水銀の海”の空中に浮かぶ島で、不可思議な四人の人物に出会うが…。
著者等紹介
フォード,ジェフリー[フォード,ジェフリー][Ford,Jeffrey]
米国の作家。1955年に生まれる。『白い果実』により1997年の世界幻想文学大賞を受賞
貞奴[サダヤッコ]
1975年生まれ。詩人
金原瑞人[カネハラミズヒト]
1954年生まれ。法政大学教授・翻訳家
谷垣暁美[タニガキアケミ]
1955年生まれ。翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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TANGO
30
図書館本。似た者師弟というか。天才的だと思っていた悪魔的マスターの頭の中で繰り広げられる、懐かしくも不思議な冒険。これは、愛の物語。2015/04/09
藤月はな(灯れ松明の火)
29
理想都市の崩壊によって新たに新天地を築き上げた人々へビロウの声をした機械が送り込まれた。その機械から発せられた気体によって昏睡状態になる人々。解決のために理想都市に向かうクレイに対する人々の対応は「どうせ、時間が解決する」という考えの停滞を表すのか。前巻では冷酷非道なイメージの強かったビロウだが、自らが生み出したミスリックスを本当の息子として愛していたり、行いの非道さを理解しながらもやり直せないと達観する姿は圧倒的に孤独です。救世主になろうとしたがエデンの蛇と同じ立場になってしまったクレイの今後は如何に。2013/01/18
あたびー
24
#日本怪奇幻想読者クラブ 1作目「白い果実」から八年。農村ウィナウで取り上げ婆なんかをやって平和に暮らす元観相官クレイ。ある日飛んできた鳥ロボがまき散らした眠り病が村に蔓延する。元独裁者ビロウからその治療薬について聞き出そうと元理想形態都市へ行ってみると、なんとビロウ自身が眠り病にかかっていた!そこに現れた元怪物でビロウに改造され大人しくなったミスリックスに頼まれ、治療薬を求めてビロウの記憶世界へ入り込むクレイ。そこで謎の美女に魅せられ…驚愕の物語は更に第三部へと進む。2020/05/26
あき
19
★★★ 3部作の2作目。前作『白い果実』の悪趣味な世界観と性格の歪みに歪んだ主人公が大好きだったので、今回は毒の薄れた冒険ファンタジーに思えて少し物足りませんでした。クレイがいい人っぽくなってしまって悲しい。高慢で鼻っ柱をへし折りたくなるクレイが懐かしい。しかし、最後の最後にハッピーエンドで終わらせないところにニヤリ。救世主になるはずが、エデンに蛇を持ち込んでしまうとは…。今回のリライトは貞奴さん。元々は翻訳を山尾さんがリライトしたことで興味を持った作品なので少し残念。前作に続き、表紙画がとても素敵です。2017/10/01
ハルバル
11
クレイは「眠り病」の治療薬を探してビロウの記憶宮殿へ潜入する。しかしすべてはビロウの計画の内であり、冒険自体も記憶宮殿という名の脳内世界が舞台であるという閉塞感、ウィナウの崩壊といい、読後にやりきれない感じを残す。クレイは記憶の女=美薬の象徴に恋をするのはまだしも、治療後の美薬の蔓延には何も対策しないし、あいかわらずのバカさ加減でウンザリ。脳内の記憶のメカニズムをそのまま象徴させた世界は面白かったが、ストーリー自体は前巻同様、あまり好きにはなれず。とにかくどんな決着がこの世界に待つのかが気になる。2017/08/09