内容説明
一八六二年三月六日、パリ近郊のラ・ジョンシェール村で、寡婦クローディーヌ・ルルージュが殺害死体で発見された。夫人は素性を周囲に明かしておらず事件は謎につつまれる。隠された夫人の過去にはいったい何があったのか。思わぬ展開を見せる事件の前に、素人探偵タバレの親父がたどりついた驚愕の結末とは―。
著者等紹介
ガボリオ,エミール[ガボリオ,エミール][Gaboriau,´Emile]
1832年、フランス南西部の町ソージョンに生まれる。コレージュを卒業後、猟騎兵として軍隊に入団する。退役後、パリに出て法律や医学を学び、糊口をしのぐためさまざまな職を転々とした。1866年、新聞連載小説として発表した世界初の長篇ミステリ『ルルージュ事件』で一躍脚光を浴びる。以降、長篇小説を精力的に発表。1873年、41歳の若さでパリで急逝した。コナン・ドイルなど、ミステリ草創期の作家に大きな影響を及ぼしたことでも知られる
太田浩一[オオタコウイチ]
1951年、千葉県生まれ。中央大学大学院修了。フランス文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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セウテス
91
ルコック探偵シリーズ第1弾〔再読〕。世界最初の長編ミステリと言われており、刑事であるルコックが警察仲間と捜査をするので、世界最初の警察ミステリでもある。本作で登場のルコックはデュパンの様な天才肌ではなく、科学的に証拠を検証していくソーンダイク博士のタイプ。本作では素人探偵のタバレ先生が中心となり、シリーズ全5作品の次作よりルコックは活躍する事となる。殺害されたルルージュ夫人が、実は正体不明であるという魅力的な謎で始まるのだが、本作の特徴は読みやすい事だ。古典なのにモダン、物語として単純に素直に面白い傑作。2019/12/06
藤月はな(灯れ松明の火)
49
読友、風見鶏さんのフローベルの『感情教育』(光文社新古典文庫)へのつぶやきでこの本が紹介されていたのが縁で読みました。アレクサンドル・デュマにも匹敵する濃い人間ドラマと亡くなったルルージュ未亡人の抱えていた謎から引き起こされる騒動が面白すぎます。ああ、やっぱり、フランス文学、最高!!やっぱり、『モンテ・クリスト伯』といい、アルベールという名の男子は素敵男子なんだなと妙な所で感心しました。真相が苦かったにしろ、タバレの親爺さんが事件のことをいつまでも覚えているというのが皮肉でもあり、一種の救いなんだろうな2014/11/04
SIGERU
31
ポーが推理小説の始祖なら、ガボリオは長篇推理小説の生みの親だ。1866年に発表された本書は、ミステリ史上に輝く里程標的作品。まず、ガボリオの筆力に瞠目した。未亡人殺しの犯人を追って、状況証拠を丁寧に積み重ねていく過程が読ませる。フランス心理小説の伝統を継いで、捜査する者と被疑者との心理的駆け引きが火花を散らし、物語が昂揚していく。ドストエフスキー『罪と罰』の、ラスコーリニコフとポルフィーリイ検事との丁々発止のやり取りに影響を与えた可能性すらある。当時、フランス文学がロシア文学に与える影響は絶大だった。2021/10/31
西野圭吾
17
久しぶりの投稿。 最近ミステリー小説をちゃんと読もうと決めて、この作品が世界初の長編推理小説と言われているのを知り、手に取りました。 決して読みやすいとは言えなかったですが、一癖も二癖もある登場人物の様々な想いがからまり、物語は進んでいく。名作です。楽しんで読めました。 予審判事のダビュロン氏と、名探偵のタバレさんが笑ってしまうぐらい問題児で、魅力的です。 2025/04/16
Clean John
15
「世界最初の長編ミステリ」という文言に惹かれ衝動買いした1冊です。モルグ街の殺人で難解な文章に(内容は面白かったです)悪戦苦闘していた自分なので、400ページもあんなんが続くのかぁ、と戦々恐々としていましたが、杞憂でした。かなり読みやすい文章でスラスラ読めました。 途中まで、連綿と続くミステリの基盤となる作品に歴史を感じながらしみじみと読み進めていましたが、最後はそんなことも忘れて夢中になって読んでしまいました。 最後の息もつかぬ展開は必見!2017/06/11