内容説明
都市ベローナに何が起きたのか―多くの人々が逃げ出し、廃墟となった世界を跋扈する異形の集団。二つの月。永遠に続く夜と霧。毎日ランダムに変化する新聞の日付。そこに現れた青年は、自分の名前も街を訪れた目的も思い出せない。やがて“キッド”とよばれる彼は男女を問わず愛を交わし、詩を書きながら、迷宮都市をさまよいつづける…奔放なイマジネーションが織りなす架空の都市空間を舞台に、性と暴力の魅惑を鮮烈に謳い上げ、人種・ジェンダーのカテゴリーを侵犯していく強靱なフィクションの力。過剰にして凶暴な文体、緻密にして錯乱した構成、ジョイスに比すべき大胆な言語実験を駆使した、天才ディレイニーの代表作にしてアメリカSF最大の問題作。
著者等紹介
ディレイニー,サミュエル・R.[ディレイニー,サミュエルR.][Delany,Samuel R.]
1942年ニューヨーク生まれ。ニューヨーク市立大学を中退後、漁船乗りやフォークシンガーとして世界を放浪、62年『アプターの宝石』でデビュー。該博な知識と詩的文体、多層的語りを駆使してメタファーに満ちた神話的作品を多数発表、アメリカン・ニューウェーヴの旗手として活躍。自伝The Motion of Light in Water:Sex and Science Fiction Writing in the East Village 1957‐65(88)はヒューゴー賞を受賞
大久保譲[オオクボユズル]
1969年生まれ。東京大学教養学部卒。現在埼玉大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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