未来の文学<br> ケルベロス第五の首

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未来の文学
ケルベロス第五の首

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  • サイズ B6判/ページ数 331p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784336045669
  • NDC分類 933
  • Cコード C0397

内容説明

地球より彼方に浮かぶ双子惑星サント・クロアとサント・アンヌ。かつて住んでいた原住種族は植民した人類によって絶滅したと言い伝えられている。しかし異端の説では、何にでも姿を変える能力をもつ彼らは、逆に人類を皆殺しにして人間の形をして人間として生き続けているという…。「名士の館に生まれた少年の回想」「人類学者が採集した惑星の民話」「尋問を受け続ける囚人の記録」という三つの中篇が複雑に交錯し、やがて形作られる一つの大きな物語と立ちのぼる魔法的瞬間―“もっとも重要なSF作家”ジーン・ウルフの最高傑作。

著者等紹介

ウルフ,ジーン[ウルフ,ジーン][Wolfe,Gene]
1931年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。兵役に従事後、ヒューストン大学の機械工学科を卒業。1972年から“Plant Engineering”誌の編集に携わり、1984年にフルタイムの作家業に専心するまで勤務。1965年、短篇“The Dead Men”でデビュー。以後『デス博士の島その他の物語』(1970)、“The Eyeflash Miracles”(1976)、“Seven American Nights”(1978)などの傑作中短篇を次々と発表、70年代最重要・最高のSF作家として活躍する。その華麗な文体、完璧に構築され尽くした物語構成は定評がある。80年代に入り『新しい太陽の書』シリーズ(全四部作)を発表、80年代において最も重要なSFファンタジイと賞される。現在まで20冊を越える長篇・10冊以上の短篇集を刊行している

柳下毅一郎[ヤナシタキイチロウ]
1963年生まれ。東京大学工学部卒。英米文学翻訳家・映画評論家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

96
非常に名著だということですが、かなり興味のない人には難しいのかもしれません。SFミステリーとでも言ってしまうとそれまでですが背景や内容は考えさせてくれるものがあります。私は映画でアレクセイ・ゲルマン監督の「神々のたそがれ」に似たものを思い浮かべてしまいました。ほかの作品と同様に再度読むことになりそうです。2015/09/10

藤月はな(灯れ松明の火)

80
SF、ミステリー、純文学、ファンタジーとジャンル分けが無粋に思えるくらいの天衣無縫さで描かれた双子星を舞台にした物語。自我は自分以外の存在によって自分との繋がりが緩やかでありつつも断絶している世界との境界を意識できるが、同時に固定化された「自我」が脅かされる不安定な世界で構成された自我から超越することは難しい。故に人が生み出し、紡ぎ出したこと全ては事実であり、同時に虚構である。静かだからこそ、不穏な空気が漂う三篇が緩やかな繋がりを持っていて芳醇な世界を構成しているのに気づいた時は陶然としてしまいました。2015/10/21

kokada_jnet

69
この人がやっていることが、自分がSFや文学に求めることと、まったく違うのだな。作品の謎を解きたいと思えない。自分にはどうでもいい本だった。ユーモア・センスがまったくないか。あるとしても自分の琴線にふれないセンスであるかの、いずれかなのが、辛いところ。そういえば、小谷野敦先生が、ジーン・ウルフを絶賛している若島正先生の文学観について、以前、「囲碁・将棋に興味がもてないことと同じように、関心がもてない」と書かれていたような…。私は囲碁・将棋や本格ミステリなどは好きなのだが、ジーン・ウルフは苦手なのだ。

hanchyan@だいたいなら御の字

41
毎日毎日いろんな小説を読んでればそりゃあ「あ、コレはこんな感じの」「ああいう雰囲気の」といった“ピンとくる”感覚をもつのは当たり前で、それは個々人の読解力とは別問題として身につく習性・スキルであり、要するに自分まだまだゼンゼン“門前の小僧”なんだなあと痛感。「本を手に取りそこに著されたテクストを読む」行為そのものがこれほどスリリングだったのはいつ以来だろう。著者お初。ものすごく面白かった。以下コメント欄にて、本書を手に取るきっかけとなった敬愛する読友さんのスタイルをまねて格話…というか各“章”の感想を。2016/06/14

kasim

35
SFでファンタジーで民俗学の資料で、未来の話なのに19世紀辺りの気怠いフランス植民地ぽくもある、ウルフらしい雰囲気満載の物語。人類が植民した双子星を舞台とする三つの中編が「複雑に交錯し、やがて(…)一つの大きな物語と立ちのぼる魔法的瞬間」という謳い文句を誤解して読んでしまったが、最後にオチがどんと来るのではなく、『新しい太陽の書』と同様、いろいろな解釈の可能性があってどれもほんのりとしか立ち現れないガチの(ポスト)モダニズム文学でした。記憶、書くこと、分身、アイデンティティ。面白いけど難しすぎる。2019/10/27

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