内容説明
夢と希望に満ち溢れた新任教師、伴三千代。心優しき人々に囲まれながら、ひたむきに少女を愛す彼女がやがて出会う数奇な運命とは―。玲瓏玉の如き詞藻もて綴る、幻の名作が遂に復活!平成に現れし孤高の乙女小説家、岳本野ばらが時空を超え入魂の解説・註釈を加えて封印を解いた“吉屋信子乙女小説コレクション”全三巻、ここに完結。
著者等紹介
吉屋信子[ヨシヤノブコ]
1896年(明治29年)新潟県生まれ。10代より雑誌投稿を始め、20歳の時不朽の名作『花物語』を「少女画報」に発表、〈女学生のバイブル〉といわれベストセラーとなる。以後少女小説から純文学まで幅広く執筆。昭和27年、『鬼火』で第4回日本女流文学者賞を受賞。昭和45年、紫綬褒章を受ける。昭和48年、鎌倉に病歿
岳本野ばら[タケモトノバラ]
京都府生まれ。美術、音楽、演劇、雑貨店店長など様々なジャンルでの活動を経て、フリーペーパー『花形文化通信』の編集に携わり、執筆活動を開始。平成10年、初のエッセイ集『それいぬ 正しい乙女になるために』(国書刊行会/文春文庫+PLUS)を刊行、“乙女のカリスマ”として支持を受ける。平成12年、『ミシン』(小学館)で作家デビュー
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感想・レビュー
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青豆
8
東京から田舎の女学校に教師として赴任してきた伴ちよこ。赴任先に向かう電車の中で置き去りされた子供を引き取り育てながら、教師とて一生懸命勤める中で 東京から来た高慢ちきな香世子とその母親から嫌がらせ等を受けるも気高く生きる千代子。最後は引き取り育てた少女の両親がわかり、自分の生き別れた父親とも再会。挙げ句に副校長に出世などと幸福が怒濤の如く訪れるという御都合主義満載で少し白けてしまった。2014/08/28
だだ
3
冒頭の汽車のシーンがとても好き。紅雀もこのようなシーンがあったけど、当時の汽車運行の仕組みや乗客の様子などがとてもおもしろい。内容的には乙女小説コレクションシリーズ3冊の中では少し落ちるように感じた。途中までは面白いのだけど最後に強引に大団円にまとめすぎた感がある。しかも早足で。この2倍の紙幅があればもう一つ二つ山を作って漱石の坊っちゃんの女教師版ともいうべき面白さにもなっただろうに。2015/02/24
壱片時乃
1
物語のまとめ方がやはりとても上手。ドラマの作り方は『鞠子』『あの道この道』に似ていてこの二作を読んだ後だと後の筋が読めたけど、それでもなお楽しめました。ただ本作は良くも悪くも少女小説のお手本のような出来で、『屋根裏』『黒薔薇』のような毒がなく、文章もまた信子にしては大人しく無難です。題名の通り主人公は伴三千代という女学校の先生ですが、本作では多くの脇役にスポットライトが当たっています。逆に言えば三千代の物語はあっさりしていて少しだけ感情移入し辛い面も。彼女の少女期から話を始めても良かったのかもしれません。2011/05/17
ni-ni-
1
田舎の女学校に赴任が決まった新米の女性教師。両親を亡くしながらも人格者である伴先生に突っ掛かっていくのは、東京からやってきた金持ち母娘。モンスターペアレツな母の画策をその人徳で切り抜ける伴先生。ご都合主義な展開ではあるけど、恋愛要素のないストーリーは読みやすい。解説でのばら氏が、女性らしさとか感性みたいなものを述べていて、ちょっと鬱陶しかったかな…。しかし、貞淑女学院って凄い名前!2010/08/03
とと
0
凛として美しく一本気、優しさと清らかさと気高さを持った、それは素敵な伴先生。東京から田舎の女学校に赴任することになった伴先生が、行路電車の中で捨て子を拾う。そんな伴先生を生徒たちは慕うが、東京から原級を逃れるために転入してきた一人の女学生は... あの道この道もそうだったけど、いろんな人が出てきて、意地悪をしたりるんだけど、最後は美しき心根の善行によって全てが救われハッピーエンドみたいな、少女小説がとても好きです。2016/09/18