透明な対象

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  • サイズ B6判/ページ数 207p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784336040299
  • NDC分類 983
  • Cコード C0397

内容説明

「これが彼にとって4度目のスイス旅行であった。最初の旅行は18年前で、そのときは父と一緒に数日間トルーに滞在したのだった。10年後、32歳になって、ふたたびその古い湖岸の町を訪れたときには、2人で泊まったホテルを見に行くことで半ば驚きと半ば悔いの入り混じった感傷的なスリルを味わうことに成功した…。」さえない文芸編集者ヒュー・パーソンは、スイスに住む大作家Rのもとを訪れるため列車に乗り込んだ。車内で同席した若く美しい女性アルマンドに心惹かれた彼は、やがて奇妙な恋路へと足を踏み入れていく。ナボコフ一流の仕掛けが二重三重に張り巡らされ、読者を迷宮へと誘い込む最後の未邦訳作品、待望の刊行。

著者等紹介

ナボコフ,ウラジーミル[ナボコフ,ウラジーミル][Nabokov,Vladimir]
1899年、サンクトペテルブルクに生まれる。1919年、革命により亡命し、ケンブリッジ大学卒業後、ベルリン、パリで生活する。26年に処女小説『マーシェンカ』を発表。40年に渡米。このころから、英語で小説を執筆し始める。20世紀の世界文学を代表する作家の1人と目されるようになる。独特の魅力に満ちた文学評論も数多く残している。77年没

若島正[ワカシマタダシ]
1952年、京都生まれ。京都大学文学部英文科卒業。現在、京都大学大学院文学研究科教授

中田晶子[ナカタアキコ]
福島県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、南山短期大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

優希

102
歪みと謎に満ちた物語を深く読み込んでいくと、その背景の美しさが浮き彫りになっていくようでした。その何かを見つめたくてたまらないのに、透明に透けていて見えないような曖昧さがあるような気がします。それは感情が過ぎ行く時間が瞬間的であるからのように思いました。消えゆくような想いによって迷いと探索の中に漂うような感覚に陥ります。2017/05/08

Tonex

49
再読。語り手「私」とは誰なのか?「我々」とは何なのか? 自分で謎解きするのは早々にあきらめ、ネットで解説を探してざっと目を通した。「ええっ!そういう話だったのか!?」という驚きとともに再読。1回目はさっぱり何のことやらわからなかった部分の意味がわかって鳥肌がたった。▼それでも意味不明な部分は多い。3回読んだらもっとよく理解できるに違いないし、いろいろ関連項目を調べたり、原文と照らし合わせたりしていたら、おそらくこの本だけで半月くらい遊べるだろうが、こればかり読んでるわけにもいかないので、次の本に行く。2016/06/11

Tonex

47
さえない編集者がスイスのホテルで人生を振り返る話。長さとしては中篇小説なのでナボコフの作品としてはとっつきやすい部類だと思う。▼新潮文庫版『ロリータ』の翻訳でナボコフマニアぶりを発揮した若島正による読みやすい翻訳。しかし、読みやすいことと、内容が理解できることとは別。例えば、この小説における謎めいた語り手「私」とはいったい誰か、「我々」とはいったい何者たちを指しているのか、という問題。訳者あとがきには、「語り手の正体は、決定的には最終の一行で明かされる」とあるが、さっぱりわからない。2016/06/10

Yusuke Oga

23
ナボコフが召されるちょっと前にスイスのホテルでしたためた、解説いわく、冥界から読者へ向けて「君、君」と語りかけてくれるような最後の贈り物というべき極上の名編・・・・といえば、なんだかわかったような気がするが、なんだかわからないのだ、困ったことに。小説は、空間やら時間やら人々の心理やらという対象を移動して、それらを思いのままに覗いてしまう「神の視点」という越権行為を、芝居などとは違い自由に駆使できるかっこうの場なのだけれど、複雑なできごとを明らかにする目的で発明された(?)やり方が、みごとに放棄されている。2014/10/03

chanvesa

21
むかし新聞の読書欄で、フロイトによるテニスの分析の本の記事を読んだような気がする。そのせいかテニスの場面が、夢の話、アルマンドとヒューの関係などとセクシャルな連関が見えてきそうだが、自信はない。解説にあるヴィトゲンシュタインとのつながりは「我々がやらないことになっているもうひとつは、説明不可能なものを説明することだ。」(145頁)が、例の「沈黙」に通ずるようだが、その後の「現実が持つ夢のような本質」(146頁)なんて、そうだと思った瞬間実はナボコフがシニカルにこちらを見ているのでは、と疑心暗鬼になる。2018/06/02

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