文学の冒険<br> 生埋め―ある狂人の手記より

文学の冒険
生埋め―ある狂人の手記より

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  • サイズ B6判/ページ数 219p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784336040282
  • NDC分類 929.9
  • Cコード C0397

内容説明

「私は誰なのか?私は何処から来て、何処へ去ってゆくのか?」11世紀にオマル・ハイヤームが四行詩集に詠った生の悲劇的感情に共感し、知的で変化に富んだ珠玉の小説のなかに、いにしえの詩人の懊悩を蘇らせた20世紀イランの巨匠ヘダーヤト。不死身のわが身を呪いつつ、死を求めて異郷に彷徨する男を描く表題作を含め、厭世観と狂気に満ちた短編小説七編の選集。本邦初訳。

著者等紹介

ヘダーヤト,サーデグ[Hed^ayat,S^adegh]
1903年イランのテヘランに生まれる。テヘランで教育を受け、さらにベルギー、フランスへ遊学。1930年に短篇集『生埋め』を上梓し、以後短編集『三滴の血』(32)、『明暗』、民俗誌『不思議の国』、史劇『マーズィヤール』(以上33)、『ハイヤームの四行詩集』(34)を刊行。1936年滞印中に著した『盲目の梟』はA・ブルトンらの賞賛するところとなって、代表作として知られる。またフォークロアの収集、評論、外国文学の波文訳等多彩な文筆活動を展開したが、1951年に逗留先のパリでガス自殺を遂げる。その他に短編集『野良犬』(42)、小説『ハージ・アーガー』(45)がある

石井啓一郎[イシイケイイチロウ]
1963年、東京生まれ。上智大学外国語学部イスパニア語科卒業。専攻は西文学、ロマンス語言語学、イスラーム学、比較思想。翻訳に「デデ・コルクートの書」からの一部抜粋(「季刊・幻想文学」2000年第57号掲載)がある
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

GaGa

47
なかなか素晴らしい短編集。作者はイラン、テヘランの生まれ。表題作よりも「S.G.L.L」「幕屋の人形」「捨てられた妻」などがいい。どれもこれも、ある種の破滅願望が根底にあり、読者の好みは判れると思うが、小説を読ませてもらったなあ、と読後つくづく思う。もっと評価されてもいい作品集。2013/03/31

藤月はな(灯れ松明の火)

43
全体的に救いすらも見いだせない厭世観の漂う短篇集。江戸川乱歩の『人でなしの恋』とギリシャ神話の『ピュグマリオン』やホフマンの『砂男』、篠田真由美の『象牙色の愛人』を連想させるような人と上手く、関われない男の人形への愛欲と悲劇を描いた『幕間の人形』、サドや男女の加虐被虐の立ち位置が逆転した谷崎潤一郎作品を彷彿とさせる、自分を蔑ろにする夫に鞭打たれることで情欲の高みを得る女を描く『捨てられた妻』、疑心と崩壊を描く『深淵』が印象的。2013/11/12

内島菫

22
母の通夜と葬儀への行き帰りの新幹線の中で半分ほど読み、残りは戻ってきてから読んだ。イランに生まれ、48歳のとき逗留先のパリでガス自殺を遂げたという著者の紹介文を先に目を通したためか、終始暗いというよりどこか息苦しい印象を受ける。確かに「幕屋の人形」は、人形に恋をするという点で同じパターンであるジョン・コリアの「特別配達」に漂う軽妙洒脱なユーモアがないため暗い。が、「生埋め」は毒薬や阿片を飲んでもどうしても死ねないという、死んだ男の記録であり、この構造自体が背中合わせのトートロジーだが、 2019/07/12

三柴ゆよし

14
厭世と破滅の思想に満ちた短篇集。ヘダーヤトはハイヤーム・リスペクト作家らしいが、天上の美人も美酒佳肴も出てこない。描かれるのは、人形に恋した男の青春であり、自死を願う狂人の独白であり、自分を捨てた夫に鞭打たれることを夢見る妻の情念である。正直言って息が詰まりそうなほどに暗い作品集なのだが、意外にも最後はきっちりと落としている作品が多く、小説としてじゅうぶん楽しめる。お気に入りはダッチワイフ文学の佳作「幕間の人形」、懐疑主義者が愛妻の幽霊に怯える「ヴァラーミーンの夜」、親友の自殺が破滅を招く「深淵」など。2013/08/10

かめた

12
テヘラン出身、ヘダーヤトの本邦初訳の作品集。重苦しく狂気に彩られている話が多いです。表題作は、過去も未来も無く生きながらにしてこの世から葬られてしまったような男の手記。自己肯定感のカケラも無い内容ですが、その主張には共感できる部分もあると感じました。「S.G.L.L」は悲しくも美しいラストが印象に残ります。「幕屋の人形」は人外の恋に落ちた男の悲劇を描き衝撃的です。馴染みの無い作家さんでしたが機会があれば別の作品も読んでみたいと感じました。2019/01/06

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