内容説明
「火炎樹が火の紋章を広げている…巨大な真っ赤な花が入江に沿ってつづく…」アフリカの王国にシニカルな白人青年、ウィリアム・イリガルがやってきた。そこで彼を迎えたのは熱狂的で破壊的、けたたましくも愛すべき狂王、トコール・ヤリ・ユルマタであった。このカリギュラのような暴君は最新兵器と鍛えあげた兵士を誇り無為な戦争に情熱を燃やすが、同時に森に住む伝説的な神秘の種族へ永遠の憧憬を抱きつづける。炎と血を思わせる熱帯の樹が導く、スラムとサヴァンナとジャングルの、叙事詩的で漫画的な熱い冒険。独裁者が森に呑まれ、自然に翻弄され、神秘に到達できないまま疲れ果てて宮殿に戻ったとき、遂にスラムの民衆たちが革命に立ち上がった。「神話的主題」を追いつづける著者による、諧謔と諷刺の祝祭的バロック小説の傑作。1976年ゴンクール賞受賞作。
感想・レビュー
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akuragitatata
1
こんな想像力がありえただなんて! 想像された大地アフリカの、さらに想像の人、国、世界の間にたつ一人の狂王の物語。征服の野望に狂いまくった様と、それを加速度的に増加させていく幻惑の舞台ウルリの森林が飲み込んでいく無限への恐怖は圧巻としかいいようがない。文章と形容の乱舞。形容と現実の区別もつかない孤独。2010/07/08
里々
0
文明と野蛮が共存する幻想のアフリカを舞台に狂王とその配下たちが繰り広げる神話的冒険。怒濤のように押し寄せる祝祭と狂騒のトランス状態はまさに原初的とでも呼ぶべきエネルギーに満ちている。ちょっと出会ったことのない類の小説。2010/05/28