内容説明
村びとの制止を振りきって、自殺者が埋葬されるという十字路までやってきたわたしは、森の中の寂しい小径を登りはじめた。やがて開けた平地にたどりついたが、そこは墓地だった。そしてその時わたしの脳裏にひとつの叫びがこだました…「今夜はワルプルギスの夜だ!」恐怖の一夜を描いた表題作のほか、「判事の家」「牝猫」「ジプシーの予言」「鼠の埋葬」「血まみれの手の悪夢」など、戦慄と恐怖に彩られた傑作九篇を完全収録。本書は怪奇小説の不滅の古典『吸血鬼ドラキュラ』の作者唯一の短篇集である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
29
表題作は自殺者の墓場に対してのプロテスタントと英国国教会の考えの違いが興味深く、無謀にもワルキプスの夜に自分達の墓に来てしまった英国紳士を心配してドラキュラに思わず、キュンとしてしまいます(笑)『牝猫』は子供の時、アンソロジーで既読。昔は復讐する母猫が怖かったのですが子猫を殺しておきながらその哀しみを悼まずに平然とその母猫に「大佐」とか気楽に呼びかけ、拷問器具である鉄の処女に度胸試しとして入るアメリカ人の方が気に食いません。そのため、愛おしいものを殺された母猫の復讐は当然だと私は言えます。2013/08/17
ニミッツクラス
20
97年(平成9年)の税抜1500円の新装1刷(旧装初版76年)を読んだ。著者の死後に刊行された唯一の短編集で9編を収録。フロレンス夫人の序文によると、著者は3巻を計画していた由。本書刊行に際して未発表の表題作を追加した。これは知名度抜群の“ドラキュラ”の名を表題に冠して売上効果を狙い、かつファンサービス。著者の死により短編集計画が頓挫した以上、中途半端で使い道のないドラキュラ前日譚(名前の無い登場人物は明らかにジョナサン・ハーカー)を世に出す最後の機会でもあったのだね。他の8編は順当な怪異譚。★★★★☆☆2021/08/20
まさ☆( ^ω^ )♬
8
先日、新訳版の「ドラキュラ」を読んだので、長らく積んどくとなっていた本書も読んでみた。可もなく不可もなくといったところか。どの短編もプロットが大体同じ感じで、他人の忠告や地域の伝承等を軽んじ、愚かな行動を取った事で手痛いしっぺ返しを食らうというパターン。現代の、SNSでバカやって自滅するやつと同じだ。昔も今も変わらぬ人の愚かなところへの皮肉なのか。本書は、古典を楽しむといった感覚で読めば良いかと思った。「牝猫」のラスト2行は不要。猫に非は全くないのだ。2023/12/08
takeakisky
2
ドラキュラを読む前にウォームアップ。ドラキュラ叢書の2冊目。ほんとに久しぶりに読んだ。巻頭がおまけのドラキュラの客。他は怪奇短篇。判事の家や牝猫はアンソロジーでもよくみる。2023/06/20
夜巴人
2
11月は(私の中では)ストーカー月間なので、久しぶりに再読。ってか、私が持ってるのとこれ、表紙のイラスト違うっぽいんだけど、私の一応初版だしなぁ……。新装版なら、個人的には集めたいぞ~。ドラキュラ×ドラキュラみたいに、収録作が若干違ったりしてるのかな?2012/11/08