内容説明
徒歩旅行の途中で迷い込んだ古い屋敷は、昔買ってもらった人形の家にそっくりだった…。謎めいた象徴、魂の奥処をゆさぶる深い戦慄。幽霊不在の時代における新しい恐怖を描く、今世紀怪奇小説の極北エイクマン初の傑作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
35
表紙の絵が、本書中の一篇「恍惚」に出てくるクノップフの「私は私自身にドアを閉ざす」で、雰囲気がぴったり合っている。四篇収められているすべてに、幽霊や正体の知れない「生き物」が出てくるが、一番怖いのは、怖い目にあう当の主人公たちのような気がする。「訳者あとがき」にも書かれている「幽霊を扱いながら主眼をその幽霊に置くのではなく、それを見る、あるいは見たと思う人間の方に置かねばならぬ」という著者の姿勢や、主人公の「存在の仕方の変化」に伴う恐怖という訳者の読み解き通り、主人公たちは得体の知れない存在に遭遇した後、2017/03/20
さっちゃん
15
これは怪奇小説だろうか?不思議な話には終わりがなく、唐突に幕を降ろされた舞台を前に戸惑うしかない。原因も不明、結末もあやふやで、どうしたらいいの?(笑)2016/02/02
魄
5
お恥ずかしながらロバート・エイクマン作品を読むのはこれが初めて。五つの短編からなるこの本ではどの作品からもストレートな恐怖は与えられはしない。けれど読み終えた後にどうしようもなく心がざわつく。霧の中を手探りで歩くような感覚で読み進めるにつれどんどん霧も深く濃くなっていく。漸く読み終えた後にもまだ『そこ』から抜け出せていないような不安を感じてしまうこの不気味さは一体なんだろう…非常にいい。表題作の『奥の部屋』が特に好きだが、他の四作も優劣つけ難い素晴らしさだった。2024/06/08
osakanachodai
5
アメリカの方が「古本屋でエイクマンの本を見つけたら必ず買う」とおっしゃっていたのを聞いて読んだ本。一部に熱狂的なファンを持つ怪奇作家で、その本はネットで高値で取引されるのだそう(くだんの方は純粋なコレクター)。不思議なことがおこってそれがモヤっと終わる感じは、昔よく読んだ日本のショートショートを思い出しました。多くの方が「オチがない」とコメントしていますが、だからと言って退屈なわけではなく、ゆうべみた夢を反芻するように読後は不思議な余韻が残ります。2015/11/11
にしきみ
2
ぞわぞわと後を引く2024/08/05