感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
48
本書は死と虚栄の美しさに育まれたロベール・ド・モンテスキューの評伝である。霊と交信する祖父の館で毛長鼬を追い、ステンドグラスの蛾、綴れ織り、箪笥や調度品など物の世界に親しんだ少年の日々。狩猟や女に明け暮れる男達を皮肉と機知でやりこめる詩を作りながら、グレフュール夫人やサラ・ベルナールら一流の女性とつきあい、秘かに慕う同性にはダンディたる矜持を保って深みに嵌まらなかった。マラルメに高く買われた彼の詩は、耽美というよりも素直に美しいと思う…《私は蝙蝠を飼うアリスタイオス/極上の灰色の蜜を作りつつ、悲しむ蜜蜂》2016/03/22
dilettante_k
3
原著65年。フランス第二帝政からベル・エポックにかけて社交界のプリンスとして君臨したロベール・ド・モンテスキュー伯爵。ユイスマンスやプルースト作品の登場人物に描かれ、ホイッスラー、ボルディニら一流の肖像画家のモデルとなった稀代のダンディの評伝。数多の貴顕、作家・芸術家に取り囲まれ、常にその中心で舌鋒鋭く振る舞う「趣味」の守護者は、趣味に特有のアナクロニックな装飾で同時代人を魅了する。傲岸不遜な「反り身」で遊蕩を嫌悪し、知的な公明正大を貫いた孤高の生涯を膨大な資料や関係者への聞き取りから練り上げた労作。2014/12/31
にかの
1
ユイスマンスの『さかしま』、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』等の人物のモデルになったと言われる人物、ロベール・ド・モンテスキューの評伝です。この人物、当時の社交界では知らぬ人なしというほどだったらしいのですが、著作はおろかその人物像すら今調べようとしても困難なほどです。ウィキにすら載っていません。それ故この著作がほぼ唯一私たちが手元に持ち得る資料足り得るものと言えるでしょう。人格的には問題がありふれるほどあり、しかし美についての探究心と審美眼は常軌を逸するほど。個人的には共感できる人物でした。2012/10/08