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内容説明
どこにあるとも知れぬ幻の国ライロニアから届けられた、奇妙きてれつ、摩訶不思議、大いに笑えてちょっぴり不気味な13の物語。町の石エアイヨにこぶができた。それがやがてアイヨそっくりに成長し“自分こそ本物の人間で、こいつがこぶなのだ”と主張しはじめる「こぶ」、自分の顔を大切にするあまり箱にしまい込んだ男の話「美しい顔」、子どもたちの間でズボンのつぎが疫病のように伝染する「赤いつぎ」、ある日クレープや歯みがき、ボタンなどあらゆる物が意地悪をしかけてくる「物たちとの戦争」、恋人の目の色を忘れた恥ずかしさで小さくなり、ついには消えてしまう若者の「大いなる恥の話」などなど、ポーランドの著名な哲学者が軽妙に語るちょっと変わったおとぎ話の数かず。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
35
ライロニアも現実には存在しない理想国家かもしれない。そんな国から届いたのは住人に関する13の物語だ。13と言えば魔女の1ダースと言われている数であり、物語も人もちょっぴり奇妙だ。ライロニア王国にはどこかで見たことのあるような人が住んでいる。ちなみにこれを書いたのは、1960年代、まだソ連が東欧諸国を支配していた頃のポーランド出身の哲学者である。じっくり読めば住人に訪れた危機を、彼等がどうやって乗り越えていくかを通じて「人生とは何ぞや?」など、哲学の真髄を語りかけている…のが聞こえる、かもしれない。2017/02/10
風に吹かれて
18
著者はポーランドの哲学者。ポーランドがソ連圏の東欧ブロックの一国として社会主義体制を堅持していた1963年に刊行。 滑稽でありながら奥深いおとぎ話13編。印象深い一編が「マイオルの神はいかにして王座を失ったか」。「人にとっては下にあるもの、神にとっては上にあり」との法律をマイオルという名の神が公布。例えば「雲は上の方にあるが、神にとっては下の方」と言わなければならなかった。しかし、あるとき、「上の方にあるものは上の方にある」と言う者があらわれた。天国も地獄も大騒ぎになり……。 →2025/06/25
rinakko
12
人の迷妄っぷりが可愛くてほろりとする、不気味哲学的寓話集。皮肉と奇天烈の匙加減は些か多めかと。「こぶ」は『東欧怪談集』で既読。確かに怖い、怖すぎる…しかし怪談か?と首を傾げるも、シュールな味わいにインパクトありまくり。背中に自分とそっくりなこぶが生えたアイヨの、切ないお話。ほか、顔の美しさで有名だったパン焼き職人が、美を保管するために高価な箱を買って顔をしまいこむ「美しい顔」(究極アンチエイジング!)、人の寿命があまりにも短いと思い当たった王の試みが国を滅ぼす「長寿問題はどのように解決されたか」…などなど2015/03/11
三柴ゆよし
12
架空の国ライロニアを舞台としたシュールで笑えて、しかも不気味な創作童話集。どんな話かというと、恋人の目の色がどうしても思い出せない兵隊が恥ずかしさのあまり小さくなったり、背中に自分と瓜二つのこぶが出来たり、平凡な男が有名人になるために甲斐ない努力を続けたり、あまりに美しい自分の顔が損なわれるのを恐れた男がそれを箱に入れて保管したり、する話です。屁理屈を捏ね通したような文章と、頭を抱えたくなるような奇天烈理論が、抱腹絶倒を誘うこと間違いなし。内田百閒『王様の背中』を髣髴させる傑作でしょう。2011/10/13
北風
8
非常識が非常識を呼び、非常識がひっくり返っても、非常識のままなにも改善されずに、ただただライロニアの人々は坂を転げ落ちていく。洒落たお伽噺ってことだけど、洒落ているかはわからない。ただきっと、本当におへそが茶を沸かす国に違いない!2016/01/27
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