内容説明
ヴェトナム反戦運動や大学紛争で騒然たる1969年のアメリカ。新作の構想を練っていた作家ジョン・バースのもとへマーシーホープ州立大学で英文学を教えるレイディ・アマーストから名誉博士号授与の件で手紙が届いた。スタール夫人の血を引き、ウェルズ、ヘッセら、名だたる文豪たちの愛人役をつとめてきたレイディ・アマーストは40代も半ばをすぎた今、作家アンブローズ・メンシュと恋におち、激しいセックスを繰り返している。大学では、自称桂冠詩人A・B・クック6世が学長代行と組んで陰謀を画策中、もう一人の作家ジェローム・ブレイは政治と小説の革命をめざし、コンピューターを使って奇怪な小説を書き続けている。一方、37歳の時に自殺に失敗した弁護士トッド・アンドルーズは、老境にはいって再度の自殺を考え始めている。行動不能の“無天候状態”に悩むジェイコブ・ホーナー君は、いまだカナダの再生復帰院に滞在中。『フローティング・オペラ』『旅路の果て』『酔いどれ草の仲買人』『やぎ少年ジャイルズ』『キマイラ』など、過去の作品の主人公たちが再登場し、彼らが交わす88通の手紙で構成される、バース文学の総決算ともいうべき超弩級の大作。