出版社内容情報
日本幻想文学集成 30
内田百閒 著
別役実 編
映画「ツィゴイネルワイゼン」の原作「サラサーテの盤」ほか「盡頭子」「件」「道連」「豹」「冥途」「昇天」「山高帽子」「影」「狭莚」「青炎抄」「東京日記」全12篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
83
図書館本。日本幻想文学集成というだけあって、どの作品も得体のしれない不気味さや不思議さの漂う話の連続で心が怖さで揺れ動いた。とらえどころなく、読み進むうちに記憶が薄れていく感じがしたが、言葉では言い表せない不思議と雰囲気と手触りがずっと残っている語りがたい1冊。冥途、昇天、山高帽子、東京日記、サラサーテの盤、が特に印象に残った。感想を書きにくい1冊だった。 2024/11/18
藤月はな(灯れ松明の火)
61
内田百閒氏の小説群に抱くイメージは「夢」だ。しかも寝ている時は絶対に忘れないと思っている程、生々しいのに起きた途端に忘れる。だけど、夢の一部だけは強烈にいつまでも残るような奇妙な現実味を帯びた夢。「道連」は生まれなかった兄との会話が互いの望みどおりに言っていないというコミュニケーションの普遍性に苦みを感じた。そして「サラサーティの盤」は以前、NHK FMラジオの「クラシックカフェ」で紹介されたチゴイネルヴァイゼン(サラサーティの声入り)を思い出しながら読んでいました。2023/06/24
まみ
15
「自分が後にゐる様な気がする、ともう一度思つたら、身動きが出来なくなつた。」あるある。夢うつつ、という表現があるけれど、私の思う百先生の世界はそんなふわふわしたものではなく、うつつの中にいるとおもったら急に裂け目ができてそこから夢が出てくるような。あるいは目眩のような。そこをことさらに騒ぎ立てたりせずに飄然としているところに心地よさを感じる。ところで、パロル舎から出ている 金井田英津子さんの挿絵つきの『冥途』(すばらしい)を読んで以来「件」を読むとあの絵に変換されてしまってどうしようもない。2011/09/05
YumiMori
5
ミステリーとかホラーとかSFとかではなくて 嗚呼これが幻想文学なのだな!白昼夢なのか幻覚なのか。小津安二郎を見ていたら ええっ?原節子がフワリと変幻するけど ふーん さうか、と言う柔らかな気分。2017/05/03
メイ&まー
4
図書館。どれも得体のしれない不気味さの漂うお話。とらえどころなく、読むそばからするすると記憶がこぼれ落ちていくけれど、不思議と雰囲気と手触りがずっと残っている。サラサーテの盤、二本榎、昇天が特に好き。2012/10/28