出版社内容情報
芥川龍之介 著
橋本治 編
芥川文学における《美》の追求。切支丹物「きりしとほろ上人伝」「じゆりあの・吉助」ほか、「葬儀記」「田端日記」「藪の中」「トロッコ」「毛利先生」「舞踏会」「庭」「彼」「あの頃の自分の事」他16編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
61
「葬儀記」は師、夏目漱石氏の葬儀の様子を描く。しかし、師の弟子(取り巻き)へのエゴの転嫁による感情の高ぶりには冷ややかであり、終盤になるにつれて作者の疲労が赤裸々に綴られる。「人間の機微など、容易く、移り変わるものだ」というかの如く。表題作は短いながらもショッキング。一番、好きなのは「葱」だ。恋という心の浮き立ちにも(野暮と言われようとも)根付く生活感に安堵してしまうからだ。2023/06/03
うさこ
2
芥川は短編が優れている。「藪の中」「地獄変」「蜘蛛の糸」「トロッコ」などをあらためて読み返してみた。特に「地獄変」に関しては典拠の『宇治拾遺物語』からはあらすじとしては遠いものになっっているが絵仏師良秀の芸術にかける情熱についての描写は凄いと思った。2014/05/01
きりん
1
芥川龍之介の幻想文学集。たしかに通りに聞くような幻想文学とちがって、随筆、私小説的な作品が多かったように思う。しかし解説にもあったけれど、立派に幻想の美しさを感じることができる。知的で冷淡な、美。百間的といってもいいのかな。「彼」「葱」「わが散文詩」が好み。2013/08/13