出版社内容情報
江戸川乱歩 著
別役実 編
都会のビルジングのはざまで起こる妖しい月光の犯罪「目羅博士の不思議な犯罪」。さかさに望遠鏡をのぞくことによって人形となった男の物語「押絵と旅する男」。ほか3篇を収録。乱歩の都市幻想が横溢する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉田あや
64
何度読んでも変わらない。禍々しくも美しく、目を背けたくなるのにじっと見つめてしまう。比類なき狂気を纏った地上の楽園、パノラマ島。飽くなき理想郷への耽溺の計算外は恋心。悪魔に心を売ってまで追った長年の夢と、一番柔らかな部分をすべて開いてしまいたい衝動に駆られるたった1つの恋。悪夢のようでいてなんとも蠱惑的なカタストロフィーにくらくら。初めて読んだ「押絵と旅する男」も絶品。夢か幻か、たゆたう美しい蜃気楼の中で見る永遠に生き長らへているかのような少女。乱歩先生の妖術に絡め取られる幸せな1冊。2016/02/25
ともゑ
3
メインの「パノラマ島綺譚」。後半からの主人公が創り上げた美しいけれども狂気に満ちてグロテスクなパノラマ島の描写が圧巻過ぎて想像力が追いつかない。想像し過ぎると酔いそうになる。ラストも壮観。幻想的な「押絵と旅する男」も押さえておきたい名作。他、短編がいくつか。読みやすく乱歩らしさもしっかり味わえる作品集。2015/04/25
浜渡浩満
3
日本幻想文学集成と冠されてるだけあって、乱歩作品の中でもとりわけ幻想的な作品が収録されていました。表題である「パノラマ島綺譚」は既読でしたが、やはりパノラマ島の壮大さは圧巻であり、その奇妙さに感嘆としてしまいました。他の作品はいずれも短編で読みやすく、中でも「押絵と旅する男」が一番好きです。序盤の蜃気楼に関する描写に引き込まれ、そして終盤には非現実的な世界へと入っていくのですが、特にその間にある老紳士の所作が印象的でした。 なんとも不思議な気分になれる、そんな作品が集められていました。2010/12/31
さく
2
読者にも芸術的陶酔が襲ふ。殊に花火の描写は美しい。2015/08/04
nobico
2
面白い。表紙のいかにもな感じのイラストで読む気を起こさせる。 友達に「これノビコ絶対好きだろ?」と渡された。 うん、確かに。 内容も面白い、奇抜。著名な人とか昔の人とかロシア人とかって、なんか難しそうな気がしてあんまり読まないんだけど、たまに読むと「あれ、なんだ現代文学じゃん」な感じ読めたりすることも多々ある。 江戸川乱歩はなんかちょっと艶めかしくて、エログロな感じ。こんな文章なんだ~と江戸川作品初体験。 「パノラマ島」と「鬼」がオモシロ。2012/02/17