出版社内容情報
三島由紀夫 著
橋本治 編
戯曲・バレエ台本を含む9つの作品で、幻想的合理主義者ミシマの正体をさぐる。美貌の御息所と高徳の老僧の恋の物語「志賀寺上人の恋」。ほかに「手長姫」「鴉」「女方」「百万円煎餅」「大障碍」「憂国」等。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
57
「志賀寺上人の恋」は対比関係が目を引いた。修行に精進する志賀寺上人は京極の御息所を垣間見て初めての恋に燃え上がる。しかし、それは肉体的接触を望まないプラトニックな感情だった故に接触は恥辱と同時に夢の成就と終わりを伴うものとなった。一方、宮中の恋の駆け引きにうんざりしつつも自身の狩猟精神は捨ててはいない京極の御息所は志賀寺上人への憫笑混じりの噂を聞いて「彼ならば」と思いを定め、接触を試みる。そして生身の上人の身体の生々しさや老いに嫌悪を抱くも仏を見出し、自分を救う事を夢見る。邂逅が噛み合わなさを引き起こす2021/11/27
白義
9
結局のところ三島由紀夫の書くものは全てファンタジーなのだ、と橋本治は書いているが、さらに付け加えるならその大半が三島由紀夫自身で、つまり三島由紀夫という存在がファンタジーにならざるを得ないということではないか、と思う。それを埋めるために三島はくどく詳細に描写するが、それが結果的にエクリチュールの次元で三島の幻想合理主義を実現するのだ。本書は近代が置いてきぼりにした万菊的なものと、それに憧れる紺の股引を穿いた青年、をテーマに歌舞伎の興行風に短編を編集している2012/11/10
shuha
1
文章が美しいので、やはり読みやすい。幻想というより幻視なのかな。2015/11/27
よはて
1
『手長姫』昼ドラ。オチが好きです。『憂国』「魂の最前線」など三島さんの描写は凄いと思いました。自害シーンは、腹を押さえ首を竦めてしまうほど壮絶でした。『百万円煎餅』金勘定を気にする恋人達に何だか親近感がわきました。2010/02/01
はちくま
0
どの作品も他のところで読んでるけど、こうして一続きの流れで読むと、また見えてくるものが違いますね。橋本治さんの解説がとてもわかりやすくて驚いた。2015/05/09
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