感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
歴史的実体を扱う美術史家の著者に敬意を表した本書は、動物と人間の顔の類似を読み(「動物観相学」)、石の模様に絵を見(「絵のある石」)、ゴシック大聖堂を森を見做し(「ゴシック建築のロマン」)、庭園を神話世界に見立てる(「庭園とイリュージョン風景」)逸脱(ab-)と錯覚(erratio)を表題とする。が、この語に光の直進想定を逸脱するレンズの「収差」なる光学的文脈を加えると、眼球を通した実体も錯覚となる。著者が歴史から抽出し自ら実践したパターン認識から成るネットワーク世界では、歴史の実体もパターンとなりうる。2019/06/10
あかふく
4
「アベラシオン」は光学上の「収差」などの意味もあるが、錯覚や迷いという意味もある。この後者がおそらく「イメージ」にとって重要だ。人々は何らかの「イメージ」を孕む。それはおそらく「ミメーシス」としてだというのが一般的な見方だが、「ファンタジア」としても、孕むことはあり得るだろう。即ち、錯覚。しかしそこには完全なる「ファンタジア」があるわけではない。どこか何かに似たものであることによってリンケージを持っている。その混合の形態がINRIに関わる怪物性(キメラ性)と「驚異の書」を結ぶ。2014/02/15
wanted-wombat
2
学術的文学作品として、割り切って読んだ。だいたい著者ほど博学でもない自分が記載事項の真贋なんて見分けられるはずもないし。同時代人でもないから余計にね。図版が多く、読んでいて飽きない。学術書(?)にしては珍しく一気に読めた。言及されている事柄はどれも興味深く、ある種の幻想性も相まって非常に引き込まれる内容ばかり。バルトルシャイティスという人のファンになるには十分な一冊。2012/10/31
ぎんしょう
2
例示に次ぐ例示で、あまり教養がないので疲れはする。でも図版もたくさんつまってて楽しい。内容は「動物観相学」「絵のある石」「ゴシック建築」「庭」だが、「絵のある石」が芸術分野では今の時代にがっつり踏み込んでるのかな。ブルトン、ライプニッツへの言及があり個人的にどきっとした。2011/11/11
宵子
1
リトアニア出身の美術史家バルトルシャイティスの著作その一。テーマは神話や建築、美術作品のイメージや形状について。ゴシック美術が登場するので、読んでみたけどかなり難しかった。 また作者名や作品が特に説明もなく登場するので、かなり教養がないと理解できないかもしれない。2014/02/12