内容説明
老船長が空にしたアラク酒の壜の中にボトルシップを作るという話が突然、南の国の小さな湾に碇泊する三本マストのスクーナー船の話になってしまう…あざやかな手品のような逸品『壜(ラ・ボテリヤ)』、盗みに入られてもほうっておく邸の主人と、節度を守って盗む泥棒たちの奇妙な共棲とその破局…『優雅な泥棒たち』、夢の中の青年を探して、少女は時を超える旅に出かけた…美しいファンタジー『蒼い夢』、速度に取り憑かれた人間を笑い、秩序に取り憑かれた国家を諷刺する『生き急ぐ』『秩序の必要性』、死を待つばかりと思い定めた老人が、ひょんなことから生きる歓びを見出してしまう悲喜劇『汽車を乗り間違えて』、構想中の小説の登場人物が実際に現われてしまった…作家のイメージの発生現場を垣間見させる『トルコ人』等々、時間と空間を自由に往き来しながら、変幻自在なプリズムの光を結晶化したような現代ドイツ随一の短篇の名手、クルト・クーゼンベルクの世界。クールな透明感あふれる文体で描く、ふしぎで、おかしくて、皮肉な21篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
67
寓意性が強いちょっと、奇妙なショート・ショート。「禍福はあざなえる縄の如し」な「裸の男」、ささやかな有効性と高いリスクという「何か」を無限に想像させる「ニヒリート」、爆笑必至の「休まない弾丸」と「魔法の扇子」、「自分がもし、自分じゃなくなったら・・・」を想像したことがある人は安心してくださいな「どなた?」、繋がると拗れる家族というものの不可解性を痛烈に抉る戯曲調「スイミン・スクール」が好き。2017/11/19
KI
26
どんなに憧れていたって、人形の家には人間は住めない。2019/12/18
三柴ゆよし
17
不条理なユーモアにあふれた10頁程度のコントを21篇収録。いずれも佳品揃いで、個人的には大満足の作品集。現実と虚構がいつの間にか地続きになっているみたいな短篇を得意としたのはフリオ・コルタサルだが、本書収録の「壜」や「蒼い夢」、「トルコ人」なんかは、その点、コルタサルにも似た味わいの作品。とはいえコルタサルのような、存在の根拠が揺らぐ系の作品は皆無なので、読後感は非常に良い。その他にも、諷刺あり、ファンタジーあり、コメディありと、まことに退屈させない小品集なのであった。2012/01/06
ふゆきち
2
飄々としたショートショート。ポジティブな意味で人を食ったような話が続きます。大変好みに合いました。2023/09/05
🦐🍴💓🥑
2
まぁ…普通かな。よく言えばあと腐れのないというか…。「不思議な部屋」と「汽車をのりまちがえて」が好き。2014/09/08
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- 和書
- 細谷不句と師河東碧梧桐