感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
63
怪異の数々に何よりも北米大陸のその懐の深さを実感させて大自然への畏怖に満ちたフォークロアの世界に魔法が息づく物語が繰り広げられる。ジョンあるいはヨハネ…荒野を行く聖人は常に行いを正し、善は必ず悪に勝つことの具現であり、数々の怪異に決して背を向けることのないその名どおり公正な男だが、その分自分に厳しく、女性に意固地でもあるようだ。だがしかし、最後にはギター片手の流離いの日々を手放すことなくピンクの乙女に癒される。めでたしめでたし…。2021/06/03
HANA
58
舞台はアパラチア山脈、腕に抱くは銀の弦のギター。知恵と唄を武器に様々な怪異に立ち向かう。所謂オカルト探偵物に分類できるのだろうけど、ジョン・サイレンス等旧大陸のそれが学識派、書斎派なのに対して、こちらの主人公ジョンは行動派。欧州と米国のヒーローの立ち位置みたいなのが垣間見えて面白いかも。あと「ウィアード・テールズ」の作家らしく宇宙的恐怖や異形の先住民、時間移動等のテーマも出てきて読んでいて嬉しくなってくる。漂々とした主人公と共にアメリカの土俗、古層をも楽しむことが出来る、幸福な時間を過ごすことが出来た。2016/02/19
Panzer Leader
55
最近読んだランズデールの「死人街道」と同じような趣向で西部を旅する主人公が様々な怪異と遭遇していく物語。あちらは銃を武器とするが、こちらは銀の弦を張ったギターで立ち向かう。ちょっとのんびりとした主人公だけに全編にほのぼの感が漂う作風で「死人街道」とだいぶ味わいが違う。2022/02/17
ニミッツクラス
29
86年(昭和61年)の2200円の単行本初版。同年の国書のアーカム・ハウス叢書(全7巻?)の一冊。カバーは63年の底本流用で嬉しい。メリル編の銀背『宇宙の妖怪たち』で「醜鳥!(=おお醜い鳥よ!)」を読んだが、それが本書11話の連作短編の冒頭部分だったとは! 日本列島が重なるほどでかいアメリカ東部アパラチア山脈地方が舞台。飄々且つ古色蒼然とした西部劇的雰囲気を醸すが、自動車も飛行機も電話も懐中電灯もある現代劇だ。吟遊詩人ならぬ銀弦ギターの放浪歌手ジョンが銀弦と銀貨を駆使して僻地の怪異に臨む。★★★★☆☆2024/01/17
£‥±±
8
米国フォークホラー映画BOXに入っていた「Who fears the devil?」の原作に邦訳が有ると知って読了。 1920年代から米国ファンタジーホラー界で活躍され、長寿多作で賞歴も有る方だが、余り本邦では紹介されていなかった。 本作は銀の弦を張ったギターで魔を祓う、風来坊のヒルビリー・ジョンを主役にした連作。 20世紀初頭から中頃の時代の話だが、百年以上前を舞台にしているかの如き錯覚に陥る。 現代のアパラチア山脈で現在進行形で生まれている怪異、伝説を淡々とした民話風語り口で書いている。 2024/12/11