出版社内容情報
悪魔が変身した美女ビヨンデッタと、ナポリ王親衛隊大尉ドン・アルヴァーレの間にかわされる不思議な恋の物語。オカルティズムと東方趣味のうえに織りあげた、フランス幻想小説の嚆矢と目される傑作長篇。
著者紹介
ジャック・カゾット (ジャックカゾット)
1719-92。フランスの作家。フランス革命の際に断頭台で処刑される。主な作品に「千一無駄話」がある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
345
カゾットはあまり知られていない作家。ボルヘス好みなのだろう。本書は主人公のアルヴァーレが悪魔に魅入られるという話なのだが、カトリックの宗教的・文化的伝統の希薄な私たちには「悪魔」といっても、今一つ切迫感がない。しかも、プロットはいたってシンプルである上に、マザコン臭もいたって強いというクセのある作品である。序文でボルヘスが言う。18世紀は「ヴォルテールと百科全書の世紀であったが、それはまた、スウェーデンボリとブレイクの世紀でもあった」と。その頃、日本もまた全く同じ状況にあった。⇒2021/06/18
YO)))
29
主人公の青年アルヴァーレは,好奇心と虚栄心から悪魔=ベエルゼビュートを呼び出してしまう.悪魔は可愛いお小姓=ビヨンデットに変身し,やがて少女=ビヨンデッタとなって只管主人公にデレる.始めは拒んでいたアルヴァーレだが….このままラノベのプロットとしてイケると思いました.2015/09/13
内島菫
27
学生のとき、大学の図書館で見つけた世界幻想文学大系で本編を読んだが、ほとんど内容を覚えていなかった。本作は例えば「マノン・レスコー」のような、恋愛の不可思議さ不気味さを描いており、「悪魔の恋」でない恋などないのではないかと思わせる。恋愛自体が一種の病的状態と言われるならば、悪魔の現れ方もまた病的なものと似ている。悪魔との恋愛を描いてしまうほど男性は恋愛好きであり、女性にもそうであってほしいと望み、女性もそのような男性に合わせる。2018/07/17
藤月はな(灯れ松明の火)
26
とある誘いで悪魔を呼び出した騎士。醜い悪魔は女の小姓として騎士に仕えるが騎士を恋の言葉をかけることによって騎士を愛の混乱へと引き込む。周囲の妬みなども気にしないほどの純粋な愛にも見えるが相手は悪魔だという点が葛藤する所です。悪魔は人間の自由意思による悪逆を促す象徴であるがそれは「愛」という真逆に見えて実は神に仕えるためには必要とされている清らな身には反する事象をもって表している所が皮肉的です。神は愛を説きながらなぜ、愛に即することは執着や悪と説くのかという矛盾をこの物語は問いたかったのだろうか。2012/12/07
みつ
19
『バベルの図書館』シリーズ。今回も初読み作家。悪魔を呼び出し、美しい小姓に変身させるとやがて彼女と恋に堕ち・・・とどこか現代のアニメにもなりそうな筋立て。瀕死の重傷を負い、コケティッシュな魅力を振りまく様からは、当初の設定を忘れ去り、あたかも『マノン・レスコー』のように、優柔不断な主人公とファム・ファタールの物語のようにも読める。それだけに終わり近くの急展開は予想外。啓蒙の世紀である18世紀においても、誘惑する悪魔の存在は魅力的。サラマンカの学僧の忠告「美しい結婚相手を悪魔と考えないように」とは意味深長。2022/03/18
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