感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
23
その作品だけでなく、ほとんど引きこもるようにして暮らしながらも、友人が大統領になったことにより領事となってイギリスへ行ったり、またイタリアにも滞在したり、アメリカへ戻った後の旅行中に突然死したりというホーソーンの経歴を見ると、ボルヘスのいう「彼の全生涯は、ひとつらなりの夢であった」という言葉が真に迫ってくる。「ウェイクフィールド」は以前、柴田元幸の訳で読んだが、初読だったせいかそちらの方がよかったように思う。2018/06/12
藤月はな(灯れ松明の火)
15
「緋文字」で有名なホーソーンだがSFチックな話も上手い。岩波文庫の短編集でも大絶賛の「ウェイクフィールド」は「自分が世界からいなくなっても世界は関係なく、動いているのではないか?」という誰もが一度は抱くであろう劇場系思考がもし、感知できたら・・・・という孤独を描く。でも私は寓意的な「黒ベール」が一番、好きです。2012/11/30
azimuth
10
表題作目当てだったけど「ウェイクフィールド」と「黒いベール」にすべて持って行かれた。「ウェイクフィールド」の主人公に共感できるかどうかは別として、自分が消えてもほかの世界には何の影響も出ないのでは、という恐怖は誰しも身に覚えがありそう。「黒いベール」は一周まわって斬新な結末。宗教的に解釈も可能なんだろうけど、そうではないほうが興味深い。「地球の大燔祭」は途中まで「おーい、ででこい」だったけどどんどんエスカレートしていった。2012/06/30
ふみふみ
8
ホーソンの寓話集。ハートウォーミングな「人面の大岩」、スラップスティック臭漂う「地球の大燔祭」が好みです。「ウェイクフィールド」は不条理と思弁でまとめ上げたからボルヘス大絶賛なのかな。モチーフが今やありきたり過ぎて個人的にはフーンって感じです。2022/11/12
春ドーナツ
8
種々の書物を読んでいると、アメリカ文学を俯瞰する上でホーソーン氏は欠かせない作家のひとりのようだ。ただですね「緋文字」を手に取る勇気がなかなか湧かない。そんなところへボルヘスさんありがとう。氏は短篇小説も書いていたのね。さて。本書は全体的に寓話風だ。晩年の星新一さんの掌編を思い出す(「未来いそっぷ」もあったな)。「寓話=昔話」という印象を持っていたのだけれど、氏の短編はポストモダーンな香りがする。執筆年代を超越しているというか普遍性があると思う。「今」なら「緋文字」に挑戦できるかも知れない。収穫の読書。2017/12/14