感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
50
下巻に入ると先祖ジョン・ディーと、彼の記録を追う「私」の生はさらに縒り合い、融け合い「私」はジョンを「そっくりそのまま受けついだ」状態に。そこからジョンが求めた「道」に至る冒険が始まりますが、心に残ったのは別のこと。道を求めて祈り、待ち、信じたものに「手ひどく」「裏切られ」た男のこと。夢も期待も天啓も「幸(さきわ)う言葉も呪う言葉も」結局は人の中から出るもので、それが人を翻弄する。それに翻弄され、しかし求めずにはいられずに辛酸と苦渋をのんだジョンの、”人間”の「哀しくも美しい姿」が胸に焼きつきました。2019/12/06
スターライト
6
現実と非現実、過去と現在を自在に往還し、実在した碩学のジョン・ディーの生涯を綴ることでその霊的な世界を描くマイリンクの幻想的な作品。何人もの登場人物が鏡による幻視で重なり合い、全てのものが危うい存在と化していく。エリザベスやルードルフなども登場し、史実と幻実を交えながら読者を惑わす筆致は見事。果たして執拗に槍の穂先を求めてくる侯爵夫人とは何者だったのか、そして失われたものが彼女の手に戻った時何が起こるはずだったのか。神秘的な作品。2021/07/14
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