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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
26
夫との結婚に後悔し、何とか娘を取り戻そうとしている病床のアニータ。コレクションのように扱う夫からスパイと駆け落ちした女優。この二つがメビウスの輪のように裏から表へいくかと思いきや、不妊治療をする記号で呼ばれる女の3つ目の世界も重なり合うことでビデオテープの決して消されない記憶への上書きのような世界観を構成していると思いました。そして上書きされた世界が最後に映し出すのは人と分かり合えないこととそれでも分かり合いたいと願う祈り。特に女優がメイドから演じた覚えのない映画の話をされるのは「蜘蛛女のキス」を思い出す2013/01/26
ヘラジカ
15
プイグの作品は『蜘蛛女のキス』『南国に日は落ちて』に次いで三冊目。例によって物語と会話の魔力に徹底的に魅了されてしまった。一人称、三人称、会話形式が入り乱れる複雑な構成でありながら、プイグならではの力強い筆力によって流れるような一本の線へと織り上げられている。時・場所・主役の違う三つの世界に投げ出された読者を、相変わらずの巧みな台詞回しが勢いと弾みをつけて運んでいく。このプイグの魔術的な力に、恍惚としながら身を任せているだけで、愛と官能の深奥に触れることが出来るのだ。ある意味で映画以上に映画的な作品かも。2014/07/19
saeta
12
プイグは以前読んだ「蜘蛛女のキス」以来。SF、サスペンス、スパイ的な側面が入り混じった、こちらも映画化をしたくなるようなユニークな作品だった。最後がややご都合主義的につながっていった感じが否めないが、なかなか面白かった。時間軸、場所を巧みにずらし、一人の人間の妄想から発展して行く感じなどデイビット・リンチを想起させられたが。2021/03/24
星落秋風五丈原
9
過去、未来、現在の三人の女が登場。現在の女は素晴らしいラブストーリーを実人生で体験するのは無理、せいぜい想像の中で体験するしかないと思っている。そして彼女は過去と未来の女を作り出し、想像の中で素晴らしいラブストーリーを体験する。ウィーン、メキシコシティ、ハリウッド。未来都市を舞台に「蜘蛛女のキス」のプイグが描く恋物語。1990/04/07
rinakko
5
とても好きな作品。映画のように美しくも煽情的な場面の数々が、世界一の美女の顔とともに心に残る。プロット自体はわかり易く追いやすいのだが、日常からかけ離れた設定の物語(官能的でもありドラマティックでもあり)と、内省的な日記や会話文が交互に現れるというスタイルが、行きつ戻りつの奥行きを生み出していて面白いと思った。他人の思考を読む能力を与えられた女優、未来都市のセックス治療部に勤めるW218、メキシコシティで入院治療中のアナ。ロマンス、スパイ、SF…と、様々な要素を盛り込んだパロディ形式も、プイグならでは。2011/07/20
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