内容説明
社会から排除される“危険な人間”はどのように創り出されたのか。19世紀末から20世紀初頭、科学と法の交錯から保安処分と優生学を軸とする“危険な人間”をめぐる議論が熱を帯びた。排除のための選別は科学の手に委ねられ、多くの一流の学者が犯罪対策と優生政策に関わり、多様な類型が考案された。生まれつきの犯罪者、変質者、社会敵対者、改善不能者、悪質遺伝者、お荷物人間、性癖犯罪者、そしてサイコパス。21世紀の今、装いを新たに“危険な人間”の言説が蘇ろうとしていないだろうか。
目次
第1章 ロンブローゾと“生まれつきの犯罪者”
第2章 “変質”と人類の危機
第3章 科学の進歩と“社会敵対者”
第4章 “無害化”という名の排除
第5章 常習犯罪人法―一九三三年ドイツ
第6章 優生学―ユートピアから絶滅へ
第7章 障害者安楽死と精神医学者
第8章 戦前日本の優生政策と“悪質遺伝”
第9章 保安監置ルネッサンスと“性癖犯罪者”
第10章 サイコパシーと“危険な脳”
著者等紹介
中谷陽二[ナカタニヨウジ]
1947年東京都に生まれる。1972年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経精神科、千葉刑務所医務部、正慶会栗田病院、東京都精神医学総合研究所を経て1999年より筑波大学社会医学系教授(精神保健学)、2012年より筑波大学名誉教授。専門分野は司法精神医学、精神病理学、精神医学史。平成10年度講談社出版文化賞、平成20年度日本犯罪学会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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