内容説明
東京をめぐる「上京」と「定住」の物語。不特定多数の人々が集う聖域=アジールとしての都市空間、東京。漱石の小説、小津安二郎の映画、向田邦子のTVドラマなどのテクストに導かれて濃密なアジール空間に分け入り、駅、下宿、坂、公園、病院、スラム、橋、郊外、住宅、百貨店、カフェー、旅という、12のトポスから近代の日本人の心性を問う、都市社会学の新しい試み。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
40
上京と定住という視点から語られた都市論。ここでいうアジールというのは、それまでの地方の縁を断ち、無縁の中に身を投ずるという理解でいいのかな。語られている舞台が駅や宿、坂といった境界や百貨店、病院といった非日常空間であるというのもそれを後押しするんだが。文学が中心に据えられているため、明治や大正が主な舞台となっているが、このテーマはむしろ東京一極化が進んだ現在だからこそ生きてくるテーマだとも思える。東京各所の文学案内としても楽しむ事が出来たし。読みながらポオの「群衆の人」をなんとなく思い出した。2013/06/02
kukikeikou
0
多少ペダンな著者が鼻につくも、好い場の成立に計画学は殆ど与していないという事の理解に役立つ。管理者の寛容さ、使い手が発見しうる隙間、などの複合が都市を豊かにする。2012/12/28