内容説明
法隆寺は面白い説に事欠かない。ギリシャ神殿のエンタシス柱がユーラシア大陸をこえて斑鳩の地に伝播し法隆寺の丸柱になった、という古代へのロマン…。数ある法隆寺論の歴史的変化を追い、近代日本の夢の跡を復元する。
目次
1 エンタシスが語ること
2 ヘブライズムとヘレニズム
3 中国へ、そしてインドから
4 伽藍配置と日本回帰
5 よみがえるエンタシス
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ムカルナス
6
法隆寺の柱はギリシャ神殿のエンタシスの流れを組むという説は学界では西洋に追随する明治時代では支持されたが国粋主義の時代になると語られなくなり、法隆寺のシンメトリーでない伽藍配置は日本独自のものだという説が主流となる。シンメトリーな様式主義を否定し、日本建築に簡素な美を見出したモダニスト達も同説を支持。いづれも実証的なものではなく時代の空気を反映した、ご都合主義の説に過ぎない。本書は法隆寺に関する学説史だが歴史って時代に合わせてご都合主義で作られている部分が結構あるんだろうな・・・と思わせる本だった。2016/07/11
Gen Kato
3
古代史&建築好きなので何気なく読み始めたら予想をはるかに超えた面白さ。学者の発言が実証された事実に基づかず「気分」でなされてしまうこと、そしてそれが勢力を持ってしまうことの危うさを、法隆寺を題材に学ぶことができました(いまだ民間説話的に生き残ってますもんね、法隆寺のエンタシス柱説)。盲目的なナショナリズム「日本スゲー」は明治維新および開国をあのような形で迎えてしまったこの国の病理なのかもしれない。けれど学者が「事実」ではなく「物語」を重んじ、信じるのはいけないという思いを新たにしました。2018/05/29
T. Tokunaga
1
法隆寺にまつわる様々な言説の興亡をときに小説的に描いた傑作。日本人の精神性というフィクションを取り払われた文化史は、エンタシスと伽藍配置を巡って岡倉天心や伊藤忠太や和辻哲郎や会津八一が闊歩する、極上のノンフィクションノヴェルになるのだ。2022/02/01
rinrinkimkim
0
井上さんは京都ぎらいで好きになりまして・・一部マニアにはたまらない過激な発言をなさるあたりがグッとくるんです。で本書は柱と建物配置についてを語っていらっしゃる。歴史というのは勝者が語るものであり、そこにファンタジーやロマンがスパイスとなるもの。法隆寺の寺宝もタダ同然で皇室に買われた明治時代だったわけで、また法隆寺のファンタジーと言えば梅原先生を忘れてはいけないし。と世界最古の木造建築は1300年の歴史とともにロマンやファンタジーやオタク心にビンビンくるんですよ。あー法隆寺行きたいなぁ~2017/09/13
アツシ
0
法隆寺の柱がギリシャ神殿の柱と同じ形態をしている事から、あの時代に既に文化的な繋がりがあったとする学説について、数多くの参考文献を基に細かく追いかけ、その時々の中心人物の心情を読み取ろうとされている。 この分野には全くの素人である私だが、とても面白く一気に読めました。 学者でさえ、世の中、学会の空気に流されてしまうことがよく分かり、そこが面白いと感じてるように思います。 井上先生の文章はとてもわかり易く、客観的で、説得力があり、他も是非読んでみようと思います。2022/09/25




