内容説明
ひとは、本とどのように出あうのか?出版のデジタル化やインターネット書店は、「本の世界」をどのように変えようとしているのか。産業としての出版・物としての本は、どのような現実のなかにあるのか。
目次
出版・読書・メディアをめぐって
第1部 出版といういとなみ(出版文化と商業主義;出版流通の公共とジレンマ;本にとって価格とは―定価販売のメカニズム;雑誌と書籍のシンクロニシティ―震災が変える構図)
第2部 デジタル・インターネット時代の出版(「電子出版元年」の四半世紀―作る技術と機械の本;デジタル機器で本を読む―電子書籍の流通デザイン;ビジネスと図書館のあいだ―グーグルとデジタルアーカイブ;デジタル化する知のシステム)
第3部 本と出会う空間(インタヘネットで本を買う―アマゾン化する空間;書店空間のメディアスタディ;本を選ぶこと、本が集まること)
著者等紹介
柴野京子[シバノキョウコ]
上智大学文学部新聞学科助教。1962年生まれ。早稲田大学卒業後、東京出版販売株式会社(現株式会社トーハン)勤務を経て、2011年、東京大学大学院学際情報学府博士課程満期退学。東京大学大学院人文社会系研究科特任助教ののち現職。日本社会学会、日本出版学会、日本マス・コミュニケーション学会、メディア史研究会会員。『書棚と平台』(弘文堂、2009年)にて日本出版学会奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やまやま
10
書物・出版のもつ二面性の対比項目として、著者は良書主義と商業主義、商業化する教養・文化といったものを挙げている。例えば国家間の比較として、英語はpublishだが日本語は出版とされていることで、出版行為のどこを指してその社会の共通概念になっているかを探るのは興味深いとする。関東大震災が出版流通の大改革になったように、東日本大震災が社会的なアーカイブの進展となったという結びであるが、その後コロナの蔓延で、出版界は電子出版を大幅に加速させた。現在あとがきを書かれるとすれば、これからどうなるのだろうか。2020/12/17
やまゆ
3
本にまつわる環境はめまぐるしく変化する。遅れないようについていきたい。新しいことも試してみたい。はたから見るのではなく、その環境の中にどっぷりとつかっていたい。2013/11/15
のぼりけんたろう
3
「町の本屋さん」が消え、「なんでも揃う」超大型書店志向が進むのは、Amazonなどそれこそ「なんでも揃う」ネット書店に対抗するための、リアルにおける対応にすぎないのだね。だとすると、リアル書店の新しい形っていうのは、松丸本舗とかみたいな、NYのブルックリンにあるような「本のセレクトショップ」しかないのかもね。2012/11/03
KT
3
大学で“出版”についての授業は多い。しかし、そこで使われているような教科書と呼べるような歴史から現状を体系だってまとめている本はあまりないと思う。この本でも(別の文脈で)紹介されているが、出版人の自叙伝的なものや、過去のベストセラーなどの背景を研究したものやあるいはルポのようなものが大半だろう。そんななかで、出版社、書店、取次、電子書籍、購書空間、読書空間など、“本”を取り囲む環境について160ページ弱でコンパクトにまとめられている本書は出版についての格好の入門書だと思う。2012/08/28
樋郡茉穂
2
大学の講義で柴野先生から指定のあった本。出版、取次、書店と本をめぐる仕事のしくみがわかりやすく書かれている。Amazon、電子書籍などの現代らしい問題についても詳述されている。